研究課題/領域番号 |
18H05300
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
荒田 幸信 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (40360482)
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研究分担者 |
高木 拓明 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (10444514) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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キーワード | 線虫 / 老化 / 超長時間撮影 / フラクタル / 時系列解析 / マイクロ流体デバイス / ライフログ / 力学系 |
研究実績の概要 |
本研究では、顕微定量計測技術、マイクロ流体デバイス技術、画像解析技術を組み合わせ、線虫を個別のマイクロチャンバ内で飼育し、その活動を寿命時間(約一ヶ月間)に渡りビデオレート(50ms間隔)で撮影・計測する。さらに、得られた巨大な時系列を、非線形時系列解析及び力学系の理論を基礎に解析することにより、動物の寿命時間を決定するモデル(力学系の方程式)を決定する。この支配方程式を、個体システムの変数を外部から操作(古典的に単離された寿命遺伝子変異体、栄養成分や代謝阻害薬剤および温度をパルス変化または一定時間継続投与することにより)することによって検証する。実験と理論の両面から得られた知見に基づいて、線虫の寿命を再現性よく伸長・短縮操作する理論と技術を開発する。今年度の成果は以下の3項目にまとめられる。1)生理的な老化を解析するためのテストケースとして、餌無しでデバイス内で6日間培養し活動時系列を取得する系の構築に成功した。時系列に対しフラクタル解析を行い、行動がフラクタルキネティックスを持った状態遷移に寄ることがわかった。さらに、飢餓処理によりフラクタルキネティックスの特徴が変化することがわかった。フラクタル解析が老化に伴う行動の変化から寿命時間を予想するための重要な指標になることがわかった。2)活動時系列を用いて遅れ座標解析を行ったところ、線虫はdiscreteな少なくとも三つの生理的な状態を遷移して、飢餓状態における活動休止状態に至ることがわかった。Discreteな生理的な状態を同定する手法を構築できたことにより、老化から死に至る過程が、連続的な状態遷移による可能性を検証することができる。3)餌である大腸菌をデバイス内に供給するためにデバイスの作成と改良を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生理的な老化過程を定量的に解析するためには、長い時系列を得るための培養系のプロトタイプとこの計測系から得られた長い時系列を解析する解析手法を選定する必要があった。本年度は、餌無しで経時的に活動が減衰する過程を観察するための系を構築し、活動時系列を取得した。この時系列に対して、フラクタル解析、遅れ座標表示が有効であることがわかった。概ね当初の目的を達したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では、餌である大腸菌をデバイス内に供給するためにデバイスを完成させ、まず6日間の撮影を成功させる。その後、寿命時間30日の撮影を行う。録画データから、活動時系列を取得し、生理的な老化過程で行動動態が変化する様子を定量的に明らかにする。活動時系列に対して、遅れ座標解析、フラクタル解析を行い、老化過程がdiscreteな状態を遷移する過程であるかを検証し、状態遷移の統計測を明らかにする。
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