研究課題
本年度は、2020年度からのコロナ禍の影響で延期となっていた行政不服審査に関する海外調査を実施した。具体的には、研究分担者である矢島聖也名古屋大学講師、谷遼大獨協大学特任助手がドイツ連邦共和国のマインツ大学、ボン大学等を訪問し、ドイツの行政不服審査の実態調査を行い、ドイツの研究者および実務家と意見交換を行った(2023年8月31日-9月7日)。また、全体会合(2024年3月3日-4日)では、上記の海外調査の実施報告として、谷特任助手が「ドイツにおける行政不服審査制度の現状と日本との比較可能性について」、矢島講師が「ドイツの地方自治制度と行政不服審査」という題目でそれぞれ報告を行い、その後参加者で議論・検討を行った。これにより、行政不服審査の機能、行政不服審査の廃止、行政不服審査会(委員会制)、行政不服審査の費用、行政不服審査手続にかかる時間、合目的性の審査、職員の能力との関係、前置手続廃止といった各論点について、日本とドイツとの比較法研究のための有益な知見を得ることができた。本研究の研究期間全体を通じて、全国の行政不服審査会の答申(必要に応じて裁決)の継続的観察、および、比較法の知見に基づいた論点設定等の基本方針の下、「行政不服審査制度」それ自体に関わる個別の論点である①「内部規範からの逸脱の審査」、②「手続的瑕疵の取扱い」、③「職権探知主義」、④「証明責任」、⑤「違法性・不当性の判断の基準時」、⑥「救済の方法」、また、「行政不服審査会の機能」に関わる個別の論点である①「規範の合理性に関する審査」、②「審査会が審査庁や審理員と同様の心証形成をすることができない場合の対応」、③「認容答申とは異なる内容の裁決」、④「付言のインパクト」のそれぞれについて、現時点までの法状況を明らかにすることができた。
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判例評論
巻: 780号 ページ: 113-118
地域総合研究
巻: 17号 ページ: 35-52