研究課題
前年度に開発したACT-Rモデルの妥当性を検証するために、ドライビングシミュレータを用いた実験を行った。実験には、自動車運転免許を持つ24名が実験に参加した。実験では、本車線と合流車線の2車線から成る道路を、参加者が運転する車と、自車の隣車線を自動走行する車の2台が走行する状況下で、参加者は次の2つの合流場面に取り組んだ。ひとつは、合流車線で自車を運転し、本車線を走行する他車を考慮しつつ、本車線に合流させるという場面だった。もうひとつは、本車線で自車を運転し、合流車線から合流してくる他車を合流させるという場面だった。実験では、他車の印象を操作するため、参加者を無作為にAggressive条件かCautious条件に振り分け、以下のように教示と試行を追加した。Aggressive (Cautious) 条件では、実験実施前に、「これからあなたが運転するのは、飛ばし屋 (のんびり屋) が多く利用する道路です」など、道路利用者に関する情報を教示した。その結果、参加者が本車線で運転する場合、他車に対して抱いた印象がAggressiveであるか、Cautiousであるかに関わらず、他車に対する印象は、自車のLead確率に影響しなかった。一方、参加者が合流車線で運転する場合、特定の状況に限り、他車に対する印象が自車のLead確率に影響した。具体的には、他車に対してCautiousな印象を抱いた場合、その印象は、自車のLead確率に影響しなかった。しかし、他車に対してAggressiveな印象を抱いた場合、その印象を考慮して合流の意思決定を行うことが明らかとなった。具体的には、他車に対してAggressiveな印象を抱いたとき、他車の印象を操作されなかったときと比べて、自車のLead確率が有意に低かった。これらの結果に基づき、ACT-Rモデルの妥当性を検証した。
2: おおむね順調に進展している
コロナ渦の状況において、当初予定していた人間参加者を対象にした実験が、思うように実施できなかった。1年の延長を通して、DS実験においては、密をさけるために、集団実験を実施することはできなかったが、個別実験を実施し、それによって、モデルの妥当性の検証が実施できた。
モデルベースシミュレーションと人間を対象とした実験の対比に基づく検討を加速させる。コロナ渦の状況を考慮しつつ、次年度は、個別実験に加え、集団実験も並行して行いたい。また、研究を進める中で、いくつかの新たな問題意識が立ち上がってきた。例えば、他者に対する思いやりの度合いが運転行動に与える影響や、近年着目されているShard Spaceなど、より自由度の高い共有場における、複数車両のインタラクションなどの問題にも取り組んでゆきたい。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
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