研究課題/領域番号 |
18H05322
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
西浦 廉政 東北大学, 材料科学高等研究所, 特任教授 (00131277)
|
研究分担者 |
藪 浩 東北大学, 材料科学高等研究所, 准教授 (40396255)
國府 寛司 京都大学, 理学研究科, 教授 (50202057)
渡辺 毅 公立諏訪東京理科大学, 工学部, 助教 (40726676)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
|
キーワード | 大域分岐解析 / ナノ微粒子 / 自己組織化 / 反応拡散系 / ポリマー相分離 |
研究実績の概要 |
真に平衡から遠い複雑現象の理解のための新たな数理的視点-非平衡組織中心網(Far from Equilibrium Network (FFEN))-を築き,そこから複雑ダイナミクスの統一的理解と制御を目指す革新的方法論の構築を実験,解構造全探索計算そして数学解析の三位一体の体制で切り開くことを目指し,本年度は次の3つの実績を挙げることができた. 1.3次元ナノ微粒子のヤヌスコアシェル型及び阿修羅粒子解を実験及び4変数Cahn-Hilliard型数理モデルの両方で作成することができた.とくに阿修羅解は3つの異なるホモポリマーにより形成される微粒子であり,3つの顔をもつ阿修羅像にちなみAshura particleと名付けた.溶媒との親和性を変えることにより,ヤヌスコアシェル型粒子解も同様に作成できた.これらを論文にまとめ投稿中である. 2.空間1次元振動テール型パルス解については,不均一媒質,とくにバンプ型によって新たに生成される多彩なパターンの全体集合の全探索を数値的に実施した.それによりパルスがバンプ型不均一性に衝突することにより生じる漸近ダイナミクスはすべて上の全探索によって得られた解の一部となることが予想として得られた.また同じ3変数型反応拡散系で,単調テールをもつパルス解と不均一性との相互作用により,Pinned solution というそこにピン止めされた解構造についても進展があり,論文として発刊できた. 3.Morris-Lecar 系という興奮型ダイナミクスを素子にもつネットワークにおいて,自己修復機能,すなわちリンクが切れる等の不完全性が生じると,それを自発的に修復する機能がどのようなグラフ構造とダイナミクスがあれば可能であるか詳細に検討した.Post-inhibitory rebound という抑制が外れたときに,大きく興奮する抑制型を導入することが,不可欠であることが判明した.本結果は論文にまとめ発刊された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要で述べたように,3次元ナノ微粒子解については,実験と理論による双方向的協働研究として,実験班の藪による微粒子作成と数理モデルによる数理的解釈が平行して順調に進み,論文としてまとめることもできた.また今後の新たな問題の展開も期待できるものとなっている.空間1次元振動テール型パルス解の全探索は,パルスとバンプの相互作用の漸近挙動を明らかにすることにつながったことは大きな成果である.さらにMorris-Lecar 系を素子にもつネットワークに対し,その自己修復ダイナミクスをPost-inhibitory rebound を鍵として数理モデルとして構成できたことは,この方面の最初の重要な成果であり,論文として発刊できた意義は大きい.
|
今後の研究の推進方策 |
3次元ナノ微粒子解,振動テール型パルス,そして自己修復ネットワークダイナミクスについてはほぼ順調に進展しており,具体的論文成果も出ている.また今後の新たな展望も開けつつあるので,現状の推進方策を維持する.空間3次元の粒子解ダイナミクス,例えばそれらの間の衝突を含めた強い相互作用については,ある一定以上のシステムサイズの大きさが必要であり,その数値計算はかなりexpensive となっている.当面は振動テール型パルスダイナミクスに注力し,アルゴリズムの改良等を平行して検討することとした.
|