研究課題/領域番号 |
20K20344
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
村松 憲仁 東北大学, 電子光理学研究センター, 准教授 (40397766)
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研究分担者 |
鈴木 伸介 公益財団法人高輝度光科学研究センター, 光源基盤部門, 主幹研究員 (00416380)
伊達 伸 大阪大学, 核物理研究センター, 特任教授 (10372145)
清水 肇 東北大学, 電子光理学研究センター, 名誉教授 (20178982)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 光子ビーム / 逆コンプトン散乱 / 軟X線 |
研究実績の概要 |
軟X線の逆コンプトン散乱による高エネルギー光子ビーム生成・実証へ向けた最終段階の試験を着実に進めることができた。本研究を進めているニュースバルBL07Aの真空チェンバー内に設置したMo/Si多層膜ミラーで92 eV付近の軟X線を反射させ、同じく本研究で開発・整備した低速移動X線ワイヤースキャナー検出器により、反射X線成分の検出位置プロファイルを入射X線と同時観測することに成功した。また、設置した多層膜ミラーの集光性能を確認するため、低膨張ガラス基板のX線反射面を詳細に評価した。この評価においては産業技術総合研究所の技術コンサルティング制度を利用し、同研究所にある原子間力顕微鏡と超高精度三次元測定機を用いて設置ミラーと同等の予備基板を調査した。その結果、集光のための凹面研磨で1 nm以下の面粗さを達成していることを確認した。一方、数十ミクロン程度のばらつき間隔で生じている研磨痕によるX線反射拡散成分の発生および曲げ応力を利用して安価に作った凹面の曲率半径精度から起因する反射光焦点距離のずれ(理想値より2 m程度短い)が今後問題となり得ることも分かった。2020年度の前半はコロナ禍の影響による移動制限や施設利用停止があり、上記試験後の最終的な逆コンプトン散乱実証実験に至らなかった。また、年度後半はニュースバルの電子ビーム入射器更新による一時的な加速器シャットダウンが行われ、利用実験が行えなかった。よって、本研究の研究期間を一年延長した上で最終実験を行うこととした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軟X線の逆コンプトン散乱による高エネルギー光子ビーム生成の最終実証実験を行う一歩手前まで到達している。コロナ禍と一時的な加速器停止という不可避な理由によって当初計画を完遂することができなかったが、最終実験を残すのみであり研究期間の一年延長で対応する。更に、このような状況においても加速器を利用せずに進めることのできる軟X線反射ミラーの詳細評価を行い、今後に可能性のある問題点を洗い出すことができた。これらを多層膜ミラーの改良にフィードバックし、次年度の最終実験に活かすことが可能となった。成果は、兵庫県立大学高度産業科学技術研究所のアニュアルレポートにて出版されている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度に、ニュースバルBL07Aでアンジュレーターから放射される軟X線の逆コンプトン散乱実験を行い、光子ビーム生成の世界初観測を目指す。並行して、これまでに見つかった問題点を考慮した軟X線反射ミラーの再製作などを進める。具体的には、流体研磨によるミラー基板X線反射面の改良を行い、面精度と曲率半径を改善する。これによりコンプトン散乱点における反射X線の集光性能を向上させる。また、同じビームラインで同時期に実施された他実験研究において、本研究と同様の条件下でX線照射されたガラス基板が摂氏700度程度まで温度上昇することが示されている。本研究で設置している多層膜ミラーについても、水冷ミラーホルダーへの熱伝導が高真空中で不十分となっている可能性がある。ミラー基板とホルダーの間の熱コンタクトを改良し、反射面の熱変形(反射X線の集光性能悪化)を防ぐことも検討する。以上のフィードバックを踏まえた上で光子ビーム生成の観測をより確実なものとする方策を進め、ニュースバル加速器収納部内に設置したガンマ線検出器系を用いた最終的なコンプトン散乱試験を複数回行う。得られた成果は論文投稿や学会講演により速やかな公表を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍と利用加速器施設の一時シャットダウンの影響により予定していた研究計画を完遂することが不可能となり、研究期間を一年延長することとした。繰り越された科研費残額は、軟X線を反射・集光する多層膜ミラーの改良・再製作のために主に使用する。具体的には、ガラス基板の流体研磨と多層膜形成に使う予定である。また、若干の旅費使用も予定している。
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備考 |
本科研費による研究を紹介するホームページを運用し、成果を公表している。
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