研究課題/領域番号 |
18H05327
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立天文台 |
研究代表者 |
松尾 宏 国立天文台, 先端技術センター, 准教授 (90192749)
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研究分担者 |
江澤 元 国立天文台, アルマプロジェクト, 助教 (60321585)
浮辺 雅宏 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エレクトロニクス・製造領域, 研究グループ長 (00344226)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | テラヘルツ技術 / 強度干渉計 / 超伝導検出器 / 冷却システム / 極低温回路 |
研究実績の概要 |
サブミリ波と遠赤外線を含むテラヘルツ領域(300GHz-10THz)において、超高解像度を達成可能なテラヘルツ強度干渉計の実現に向けた基礎実験を開始した。開発項目は、1)超伝導トンネル接合を用いたSIS光子検出器の開発、2)広帯域極低温読出し回路の開発、3)強度干渉計による画像合成手法の検証である。 超伝導検出器として超伝導ニオブを用いたトンネル接合素子(SIS素子)を採用し、産業技術総合研究所の超伝導アナログ・デジタルデバイス開発拠点(CRAVITY)の設備を用いてSIS光子検出器の試作を進めた。背景放射限界の感度を実現するため、暗電流を1pA以下、雑音等価電力(NEP)を10(-17)W/√Hz以下を目標とした。SIS光子検出器は平面アンテナ、マイクロ波回路およびSIS素子から構成され、本年度は、500GHz帯のSIS光子検出器の素子作製パラメータの最適化を繰り返すことで、動作温度0.8Kにおいてリーク電流が約2pAの検出器を実現した。本年度の検出器実験は既存の液体ヘリウムクライオスタットを用いたが、次年度以降の光学実験で用いる冷却システムとして、4Kパルスチューブ冷凍機を搭載するクライオスタットの製作を進めている。 広帯域極低温読出し回路の開発に向けては、既存の液体ヘリウムクライオスタットに0.8K吸着冷凍器の試作機を搭載し、冷却性能を評価すると共に、極低温回路の評価実験の準備を整えた。評価する極低温回路素子として、ガリウム砒素トランジスタ2種を用意している。 画像合成手法については、強度干渉計による複素ビジビリティ取得の条件を検討し、振幅干渉計と比較検討した。また、南極高地からの高解像度テラヘルツ観測の可能性について論文としてまとめ出版した。国内学会および国際研究集会では、南極高地および宇宙空間からの高解像度テラヘルツ観測の可能性について議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の初年度では、高速で動作するテラヘルツ検出器の開発が最も重要な開発課題であり、テラヘルツ強度干渉計による天体画像合成の成否を担っている。初年度の実験で、目標とする検出器のリーク電流値をほぼ達成できたことは大きな成果と考えている。また、これまでに光学実験による検出器感度の評価を進めることができ、量子効率を最適化することで目標とする性能が得られる見通しを得た。 冷却システムの開発については、光学実験に用いるクライオスタットの製作を進めることができ、今後の実験をスムーズに進めるための基礎となる。ただし、クライオスタット本体および0.8K吸着冷凍器の製作は次年度の課題として残っている。 極低温回路の開発については、既存の設備を用いた実験準備を進めているが、極低温回路素子の評価は次年度の課題となっている。開発課題がいくつか残っているが、大きな課題はクリアしつつあり、今後の強度干渉計実験に向けた準備を着々と進めている。 画像合成手法および将来計画へ向けた検討も進めることができ、本研究の意義を明確にするとともに、開発計画にフィードバックをかける上でも有効であった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、複数の開発課題を同時進行で進める必要があり、研究分担者間の連携、研究機関内での連携、および企業との協力がその成否を担っている。検出器の開発では、国立天文台と産業技術総合研究所の協力をスムーズに進めるため、今後とも必要に応じて議論の場を設ける計画である。冷却システムの開発においては、国立天文台・先端技術センターの設備を有効に活用することで、システムを構築していく予定である。また、吸着冷凍器と極低温回路の開発では、企業との協力が必要な場面があり、よりよい協力体制を構築するための意見交換を予定している。 本研究を進めるグループには、研究分担者、研究協力者以外にも、学部4年生および大学院生が参加している。本研究は、グループメンバーの活動によって支えられるという側面があり、学生教育、実験指導なども行っている。今後とも、本研究をスムーズに進められるよう、学生教育を含め、研究体制を整えていきたい。
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