2020年度までに現場環境で電気合成微生物群集を効率的に集積・培養するための新たなスタンドアローン型定電位電極システムを開発し、深海熱水域および沿岸海水での集積・培養を実施した。またLinear Sweep Voltammetry(LSV)測定と呼吸活性阻害剤添加による代謝活性阻害操作とを組合わせた電子取込み活性評価法を開発し、現場電気培養実験で得られた微生物群集の電気合成代謝を実証する結果を得た。延長した2021年度にはこれまでの深海熱水域や沿岸海水で集積・培養された微生物群集に対するマルチオミクス解析によって、電気エネルギーに支えられた一次生産と増殖を実証する事に成功した。いずれの場合も、(1)現場電気培養実験の陽極において微生物増殖に伴う電流増加、(2)電流による特定のプロテオバクテリアの特異的集積、(3)その特定プロテオバクテリアのゲノムに膜貫通型マルチヘムシトクロムタンパク質の存在、(4)メタトランスクリプトーム解析でその膜貫通型マルチヘムシトクロムタンパク質の高発現、が観察され、自然環境中で電気合成独立栄養微生物が存在すること、そして電気合成独立栄養微生物を一次生産者とする電気合成生態系が駆動されている可能性が示された。
以上の結果を取り纏め、2報の論文を投稿中である。論文発表は完了できなかったが、これらの結果を鑑みて、本研究の目標である「自然環境における第三の生命エネルギー獲得システムである電気合成エネルギー代謝の実証と電気合成生態系の存在可能性の証明」を達成することができたと考える。
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