研究課題/領域番号 |
18H05332
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
千葉 明 東京工業大学, 工学院, 教授 (30207287)
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研究分担者 |
朝間 淳一 静岡大学, 工学部, 准教授 (70447522)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ラジアル電磁力 / ラジアル力 / 騒音 / 振動 / ラジアル力の和 / SRモータ / PMモータ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、モータに作用するラジアル方向電磁力のベクトルを制御することにより、モータの振動騒音の低減を図り、この分野において世界に先駆けて、挑戦的な学術研究を推進することである。申請者らが世界に先駆けて発見した電磁力のベクトルを制御して騒音振動を低減する方法の適用可能性に挑戦している。 すなわち、東京工業大学においては、ハイブリッド自動車に搭載されているトラクション用の永久磁石モータをとりあげ、電磁界解析を行い、固定子歯に作用する電磁力を解析し、その電磁力の和によって大きな振動騒音が発生する可能性を示した。さらに、電磁力の和を平滑にする電流波形を求め、その電流を供給することによって電磁力の和が平滑化することを明らかにし、その電流を供給すると騒音が大きく低減することを明らかにした。 さらに、誘導電動機の場合についても解析を行った。電気自動車に搭載されている誘導電動機を取り上げ、電磁界解析を行ったところ、一極に対抗する固定子歯に着目しても対称性が確保できないことを明らかになった。固定子のスロット数が素数の2倍に設定されているためである。この問題は以下に記載する静岡大学の朝間准教授の研究成果を適用すれば解決できることが明らかになり、進捗した。 静岡大学では、SRモータの電磁界解析を行い、電磁力の和が一定であることと、空間の0次成分が時間的に脈動しないことが等価であることを世界に先駆けて発見した。研究代表者は、電磁力の和を一定にするとモータの騒音振動が大きく消えていくことを世界に先駆けて実証した。しかし、なぜ効果的であるのかは明らかになっていなかった。今回、朝間准教授は世界に先駆けてなぜモータの騒音が低減するのかを理論的に明らかにした。この成果については、電磁界解析、実験を追加して、国際一流ジャーナルに投稿準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者らは電磁応力が脈動しても、三相の電磁応力ベクトルの和が一定値になれば振動騒音を抑制できる例が存在することを世界に先駆けて発見した。この理論は、いくつかの欧米の大学等で実証試験が行われており、米国アクロン大学、リンカーン大学などで大きな効果があることが実証されつつある。また、国内メーカの研究所などでも検証されいている。この理論がなぜ成り立つのかは簡単な模式図によって説明されただけであり、より理論的な説明が要望されていた。 このような状況下で、SRモータを中心としてラジアル方向の電磁力ベクトルの和と振動騒音解析を行った。まず、18極12極の組み合わせについて磁界解析を行うとともに、実験準備を進め、実験による検証準備をした。また、電磁力の和がフラットの原理が適用できないように思われる8/6極の組み合わせについても検討を行い、電磁界解析、振動解析、騒音解析を行った。その結果、世界に先駆けて新しい知見を得ることができた。三相のラジアル力の和を一定にすることは、全ての歯のラジアル力の和を一定にすることと等しいことが明らかになった。すなわち、空間0次のラジアル力の和が時間的に脈動しないことと等価であることが理論的に明らかになった。したがって、mode0などの共振点に励磁振動が一致した場合に大きな騒音が発生することが明らかになった。そこで、共振点で電磁界・機械系連成解析を行ったところ、-15dB程度の大幅な騒音低減効果があることが明らかになった。 また、誘導モータ、永久磁石モータなどの場合についても電磁界解析を進めた。永久磁石モータでも大幅な騒音低減効果があることが明らかになった。すなわち、6次あるいは12次などの電流による加振がmode0の共振周波数と一致すると大きな騒音ピークを発生すること、電流指令値を工夫することによって大幅に騒音を低減できることを電磁界解析で明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、明らかになった空間0次のラジアル力の和が脈動しないことが、なぜ、騒音振動低減に効果的であるのかを明らかにする必要がある。解析によれば、mode0はたった一つの周波数しか存在しない。一方、実験ではいくつものピークを発生している。このピークがなぜ発生するのかを今後明らかにする必要がある。また、どのような構造の場合については効果的であるのかを明らかにする必要がある。 また、このSRモータの理論を永久磁石モータ、誘導モータなどへ適用するための基礎理論を模索する必要がある。すなわち、ラジアル力の和がフラットにするためには、SRモータでは、3つの歯の和を取ればよかった。一方、ハイブリッド自動車用のPMモータにおいては6つの歯が有効であった。誘導モータでは、どうすればいいのか、極数、スロット数が違う場合は何を基準とすれば良いのか、いかにしたら一般化できるのかを模索する必要がある。 この理論に基づく研究成果を、世界に先駆けて論文として発表する。この分野では最も権威があるIEEEのTransactionなどに投稿する。この分野では、実験結果がないと論文掲載は容易ではなく、昨年度製作したモータテストベッドを活用して実験を行い理論を確認する予定である。 また、国内外の学会にも発表を行い、国内のメーカがこの理論を理解できるように研究発表を行う。この成果は、特に振動騒音が問題になる用途に有効で有り、ハイブリッド自動車、電気自動車などの次世代自動車などに適用が進むようにする必要がある。電気学会、自動車技術会、特に回転機技術委員会、モータ技術委員会、回転機技術研究会などで新しい理論の基礎を説明し、メーカのエンジニアに理解していただき、自動車関係、電気関係の産業などに広く世の中の役に立てていただけるように努力したい。
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