研究課題/領域番号 |
18H05333
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木村 克輝 北海道大学, 工学研究院, 教授 (10292054)
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研究分担者 |
渡部 靖憲 北海道大学, 工学研究院, 教授 (20292055)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 下水処理 / 有機物回収 / エネルギー回収 / 膜ろ過 |
研究実績の概要 |
都市下水の中に含まれる有機物を嫌気性消化すればエネルギーを回収できるが、下水中の有機物濃度が低すぎるために嫌気性消化の都市下水への直接適用は難しい。一方、都市下水中有機物の大半がコロイド寸法以上のサイズで存在している。下水を膜ろ過処理することで有機物を回収・濃縮できるはずであるが、深刻な膜の目詰まり(ファウリング)が問題となる。本研究は、従来の研究では検討されなかったような高強度の膜洗浄を実施して、下水の直接膜ろ過を長期にわたり継続することに挑戦するものである。高強度の膜洗浄実施を可能にするために、物理的・化学的耐性が高いセラミック膜を用いて実験を行った。有機膜の場合には膜破損が生じる粒状担体の流動に伴う膜面洗浄、高濃度の薬品を用いた高頻度の薬品併用逆洗(CEB)を実施することにより、下水の50倍濃縮を試みた。実都市下水処理場にベンチスケール膜ろ過装置を設置して、最初沈殿池流出水を原水とした連続ろ過実験を行った。膜ろ過は2段階で行い、第1段目で2倍、第2段目で25倍濃縮して、トータルで50倍濃縮を達成した。粒状担体の充填率、膜透過水フラックスの設定値、CEBに用いる薬品の濃度、CEBの実施頻度を検討項目とし、連続実験を行った。充填率については膜分離槽容積の30%相当、膜透過水フラックスは一段目タンク6.5LMH、二段目タンク4.2LMH、CEBについては1250ppmクエン酸を用いて6時間に一度の頻度で実施することにより、一ヶ月程度の連続運転が可能であることを確認した。この実験で観察された膜ファウリングは大半が膜表面に蓄積したケーキ層によるものであり、物理的洗浄の効率を高めることで、より高いフラックスで安定した運転を長期にわたって実施することが可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに検討例がない高強度洗浄を実施することで、長期にわたり連続して下水中の有機物を回収・濃縮できることを実都市下水を用いて実証した。長期運転において膜の破損が生じていないことも確認できた。運転のさらなる効率化に向けて、検討すべき項目は明確になっており、有力な研究成果として国際雑誌に発表できることが視野に入っている。
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今後の研究の推進方策 |
物理洗浄効果を高めるために、タブー視してきた短期間のばっ気を導入する。全運転時間に対して10%未満のばっ気継続を想定しており、エネルギー消費量の増加と回収可能エネルギーの減少(有機物の無機化)は許容範囲内とすることができると考えている。近年の研究動向を踏まえ、CEBに用いる薬品を改めて検討する。鉄系の薬剤が有望であると考えている。これまでに実験を行った下水処理場では、冬季に水温の低下が実条件を超えて激しくなるため(室内気温の低下と水槽容積の小ささに起因)、これを緩和するための措置を講じる。
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