都市下水の直接膜ろ過により下水中の有機物を濃縮すれば、下水からのエネルキー回収量を大幅に増加させられる。我々は、セラミック平膜を粒状担体流動により洗浄することで下水直接膜ろ過の長期連続運転が可能であることを見出している。本研究では下水の直接膜ろ過を高フラックス条件(約10 LMH)かつ高倍率濃縮条件下で試み、安定運転が可能となる方法の検討と膜ファウリングの発生機構を調査した。下水直接膜ろ過において、原水の変更(初沈流入水→初沈流出水)、間欠ばっ気の導入、適当な薬品を用いた逆洗(CEB)、簡易な前処理(生物膜処理)の導入が効果的な膜ファウリング抑制方法であることを見出した。これらのファウリング抑制方法は有機物回収率を低減させるものではないことを確認した。下水直接膜ろ過において濃縮・回収される有機物のバイオガス発生ポテンシャルは、通常の下水処理場において嫌気性消化の対象となる有機物(余剰汚泥)よりも50%程度大きくなることが明らかになった。これは、直接膜ろ過において回収される有機物が未分解の有機物主体であり、余剰汚泥が主に菌体から構成されることによるものであったと考えられた。本研究では下水の濃縮倍率を150倍まで上げることに成功した。下水の直接膜ろ過によって回収される有機物により生産するバイオガス・発電量を試算した結果、下水の直接膜ろ過に消費されるエネルギーを大きく上回る量のエネルギーを下水から生産できることが見込まれた。
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