研究課題/領域番号 |
18H05335
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
長谷見 雄二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (40298138)
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研究分担者 |
松山 賢 東京理科大学, 理工学研究科国際火災科学専攻, 教授 (10307704)
鈴木 恵子 総務省消防庁消防大学校(消防研究センター), その他部局等, その他 (50358800)
鍵屋 浩司 国立研究開発法人建築研究所, 防火研究グループ, 上席研究員 (90298191)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 火災 / 高齢化 / 火災感知 / 消火 / ネットワーク |
研究実績の概要 |
(1)住宅系居室における火災成長過程の実大規模実験と標準モデル原案の作成 高齢者住居火災が拡大する主な要因である寝具等からの燃焼拡大を対象に出火室燃焼拡大性状の標準化の基礎づけを目的とする実験をルームコーナー 試験装置により行い、それに基づいて高齢者福祉施設を想定した寝具出火時の標準モデル原案を作成した。 (2)木造建築の遮煙・遮炎改修に適した材料・工法に必要な性能の明確化 既存の大規模木造建築の階段等の全館避難経路への煙の侵入防止改修に有効で、避難者が通行可能な自動閉鎖型遮煙設備を構想し、不燃膜によるプロトタイプで気温300℃までの遮煙性能を確認した。準防火地域の建物間延焼防止規定の根拠の文献調査により、防火構造以上、一定規模以下の建築物のみで構成された市街地では、外周部材の防火性能を緩和しても延焼危険が低下しないことを明らかにした。 (3)火災信号共有システムを導入した伝統的建造物群保存地区における火災信号対応状況調査 研究代表者が防災計画に関与し、火災信号共有システムを導入した高山市三町、桐生市桐生新町等の伝建地区において、火災信号発報時のに住民等の対応行動を調査し、住民の生活実態、共同体意識、年齢等と災害時に可能な対応行動の関係を明らかにした。 (4)常備消防不在集落における消防団・住民による共同防災組織化の実装実験 消防署等が設置されていない山間集落型伝建地区、離島集落、東アジアの発展途上地域の市街地で、研究代表者が防災計画に関与している地区を対象に、常備消防に依存しない防災体制の適用可能性を、易操作消防設備を利用した実験、アンケート・聞き取り調査により検証した。機能的な防災体制の構築に必要な課題の抽出が目的である。対象地区は、焼津市花沢伝建地区、奄美大島笠利地区、カンボジア王国シェムリアップ市である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、当初の研究計画通り、調査・実験を含む研究を遂行し、最終年度に予定していた研究に円滑につながる成果が得られている。また、本研究課題では、実用的な技術開発そのものは対象としていないが、本課題の途中成果等に関心を持った自治体・企業等とは共同研究を行って、条例への活用等の実用的成果を生み出している。本年度の研究成果(実績概要(2)に記載)を踏まえた開発研究も、別途、令和2年度の財団系助成研究として採択されるなど、本課題の構想をもとに種々の研究開発を振興させていく、という目標も、順調に達成されつつある。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる令和2年度には以下の研究を推進する。但し、(5)については、新型コロナウィルス感染に関わる現地調査の困難性を危惧している。調査時期や調査方法の変更の可能性も検討している。 (1)就寝室の火災成長過程の標準モデルの作成 本年度は福祉施設を想定して検討したが、次に、想定対象を宿泊施設、高齢者住宅等に拡大して、火災成長過程の標準モデルを提示する。 (2)既存建築物に実装可能な遮煙設備の活用による避難安全性評価手法の開発 本年度に基盤技術を開発した木造旅館の廊下等に実装可能なスクリーン状の遮煙設備を活用し、避難経路の安全性が確保されていない既存建築物に適した避難計画モデルを開発する。 (3)歴史的市街地のファサードの延焼防止性能評価に適した標準加熱条件の導出 歴史的市街地では、外壁や開口部の防火法令適合が困難であるが、本年度の文献調査では、近隣火災時が道路側外壁が受ける加熱条件は、関連 試験法の加熱条件の想定より弱いことが判明した。そこで、歴史的市街地での法同等延焼防止性能の検証のための加熱条件を実験的に把握し、歴史的市街地の景観保存を前提とする外周部材の延焼防止性能評価法の基盤とする。 (4)火災信号共有システム導入時の初期火災対応行動予測のための調査 火災信号共有システム導入時の初期火災鎮圧可能性、避難誘導行動を、調査結果からモデル化し、火災早期対応体制の設計の基本指針を誘導する。 (5)常備消防不在集落における消防団・住民による共同防災組織化の実装実験 消防署等が設置されていない山間集落型伝建地区、離島集落 、東アジアの発展途上地域の市街地で、研究代表者が防災計画に関与している地区を対象に、常備消防に依存しない防災体制の適用可能性を自主防災に適した装備の実装により検証する。対象地区として、奄美大島笠利地区、カンボジア王国シェムリアップを想定している。
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