研究課題/領域番号 |
18H05337
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川畑 友弥 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50746815)
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研究分担者 |
高嶋 康人 大阪大学, 接合科学研究所, 助教 (50397692)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 脆性亀裂伝播 / アレスト / 破壊力学 / 鉄鋼材料 / 船舶安全性 |
研究実績の概要 |
世界の物流を支えるコンテナ船では脆性き裂の発生のみならず一旦伝播したき裂を短い距離の間に伝播を停止させる脆性き裂伝播特性が求められる。同特性は材料靭性を高めることで対処されているが、現状TMCP法の限界まで厚肉化が進んでおり、さらなる大型化の要望に応えるためには、現状技術延長では材料コストが極端に高騰し実現が難しい。この問題点を打破すべく逆転の発想とも言うべき新しい安全性向上方策を提案するための3項目の基礎的破壊力学検討に挑戦している。
①基礎的検討(樹脂):初年度に実施した樹脂材料の検討結果をさらに拡充した。破面粗さの定量化に成功。レーザ顕微鏡のSdr(破面総面積/投影面積)を指標とする方法を提案した。本指標を基に初年度の実験結果を再整理したところ、個々の試験片の諸条件に依らず引張と曲げのモードのみで無次元化き裂速度と粗さの関係が一意的に示されることが判った。この結果はこれまでの動的破壊力学で未確認のことであり、学術的価値が高い。 ②基礎的検討(鋼材):鋼についての分岐試験を実施。しかしながら、特に引張試験評価において脆性亀裂発生に関する成功率が低く系統的にデータをまとめるには至らなかった。しかし幾つかの重要な実験は成功させることができた。 ③安全性向上策検討:9%Ni鋼を用いたESSO試験を実施。非ディンプル加工材のESSO試験を大型2000ton試験機を用いて実施し、Go・NoGo境界を見出すことができた。今後のディンプル加工材の実験条件が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要欄に記載した項目を用いて説明する。 ①:ついては予想を超える成果が得られたと考えられる。また、当分野のトップジャーナル雑誌論文に掲載された。(判定:◎) ②:き裂の発生が困難で、樹脂材のような系統的な検討には至らなかったが、幾つかの条件で実験は成功した。(判定:△) ③:ディンプル加工材の準備も進んでおり、(判定:〇)
以上を総合して「概ね順調に進展している」と判定した。
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今後の研究の推進方策 |
基本的に当初の研究計画通りに進めていく。
①:当初の予定では曲げと引張のみの調査で良いとしていたが、さらに無次元化き裂速度と粗さの関係が異なる載荷モードを見出し、実験を進めて行く。マクロ分岐条件に関する弾性材料における一般化を行いたい。 ②:まずは安定して実験が成功する条件を見出す必要がある。これまでは全て母材部からなる試験片形状にて挑戦したが、困難であることが判ったので、脆化ビード法を用いて発生を容易にする方法を採用して進めたい。 ③:ディンプル付きの試験片を用いた混成ESSO試験を進める。条件についてはフラット材の伝播条件を最初に実施する。仮にディンプル材で停止が得られれば新たな構造物のアレスト機能の付与法を開発したことになる。そのメカニズムについては基礎検討①②内容を踏まえ、定式化を行う必要がある。
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