世界の物流を支えるコンテナ船では脆性き裂の発生のみならず一旦伝播したき裂を短い距離の間に伝播を停止させる脆性き裂伝播特性が求められる。同特性は材料靭性を高めることで対処されているが、現状TMCP法の限界まで厚肉化が進んでおり、さらなる大型化の要望に応えるためには、現状技術延長では材料コストが極端に高騰し実現が難しい。この問題点を打破すべく逆転の発想とも言うべき新しい安全性向上方策を提案するための3項目の基礎的破壊力学検討に挑戦している。
①基礎的検討(樹脂):樹脂材料の検討結果をさらに拡充し、多くの検討を行った。学術的に価値の高い多くの成果を得た。・破面粗さの決めてとなるマイクロブランチとブランチ亀裂の継続性については負荷モードの影響を強く受けることが改めて判った。このことを強く支える理論を構築した。・併せて実施したFEM解析の結果、Kd値と破面粗さ(散逸エネルギー)の強い相関がみられた。 ②基礎的検討(鋼材):鋼についてのディンプル付き曲げ試験を実施。伝播速度の低下や粗さの増加が確認できた。引張モードについては実験室小型試験機での再現は挑戦を続けたがやはり難しかった。 ③安全性向上策検討:9%Ni鋼を用いたESSO試験を実施。非ディンプル加工材のESSO試験と同条件にてディンプル材のESSO試験を実施した。亀裂を停止させるには至らなかったが、亀裂伝播速度を低下させることができた。また、確かに予想の通りディンプル材では破面粗さが大きいことが判った。
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