研究課題/領域番号 |
18H05342
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
神谷 秀博 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20183783)
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研究分担者 |
レンゴロ ウレット 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10304403)
豊田 剛己 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30262893)
黄 光偉 上智大学, 地球環境学研究科, 教授 (30292882)
山下 善之 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60200698)
岡田 洋平 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80749268)
大川 泰一郎 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80213643)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 農業エンジニアリング / 人工培土 / 農業プロセスシステム / 土壌構造設計 / 土壌工学 / 植物生育制御 / 親水・疎水表面設計 / 開放型圃場 |
研究実績の概要 |
本研究で着目する強靭で耐久性、収穫性の優れた作物の生育には、種から苗に生育する過程での苗生育のための培土設計として、籾殻、ゼオライト、バインダーからなる合成培土と標準的な既成培土による苗の育成、及び実際の圃場、農場での試験を実施した。試験を行った作物は、分担者の大川が開発したバイオマス生産量、収量の高い水稲新品種「さくら福姫」、分担者豊田によるトマト、豆類、野菜等を対象とした。新育苗培土は市販の育苗培土に比べて、いずれの作物でも、とくに苗の根の成長を促進し根乾物重が大きく、地上部乾物重量など収量の増大が確認された。この機構を解明するため、開発培土や、モデル土壌を用いた構造解析を、分担者の豊田、Lenggoroと実施した結果、他の培土と比べ、気相・液相率が86%と極めて高く、最大容水量も乾物1g当たり0.9gと比較的大きいことがわかった。新規培土の高い気相率が、苗の根の成長に有効に働くことを可能性として指摘できた。 さらに、化学工学的プロセスシステムを、農業生産に応用するため、分担者の山下と、制御モデルの構成因子のInputパラメータとして、温度、湿度、水分量、日照の他、培土の構造(詰め方、空隙率、充填率など)を把握し、Outputデータとして、収量、品質、生育状態など、特に、新培土が有意に優れている定量的立証法の検討に必要な、同じFieldでの実験結果(収量、生育状態、根の張りぐわいなどの画像データ)の数値化、定量化手法を引き続き検討した。 また、分担者の黄と、本手法の海外展開の可能性として中国浙江省や台湾における新しい農業方法導入ニーズに関する調査し、事例研究を通して自然災害リスクと農業の関係を脆弱性の視点から解析した。特に、タイのチャオプラヤ河流域で化学肥料の大量使用により河川水が汚染され、環境保全と収入アップ両立できる新しい農業方法の導入が喫緊課題であることが再確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
強靭で耐久性、収穫性の優れた作物の生育に不可欠な苗の育成のための培土設計法として、籾殻、ゼオライト、バインダーからなる合成培土と、従来型培土の比較試験が、稲を対象に異なる規模、品種で、JA島根の協力により実際の圃場、農場で試験を実施でき、実験レベルと実際の圃場での検討を並行して実施することで、実規模で、培土の効果による植物生育のためのプロセスシステム工学の手法の応用可能性を検討できるなど、拡がりを見せている。また、基礎的な解析を目的としたモデル土壌も、ガラスビーズと疎水性粒子の組合せで検討を実施し、幅広い農学系研究者と化学工学系研究者との連携により土壌工学の新たな解析方法を含め展開が構築できている。苗、さらに作物の成長状態の画像による解析法など、プロセスシステム構築のための新規な解析法も展開できている。 さらに、海外研究者との交流の結果、本研究で実施しているアプローチが、従来も注視してきた中国に加え、台湾、タイでも新規開発した人工培土に関心が高いことが、明らかになった。農薬、肥料の供給過剰におる環境破壊、水質・土壌汚染が進んでいることが明らかになったことから、環境に優しい新たな農業の展開として、ナノ粒子、ナノカプセル化した肥料、農薬の苗への導入と徐放システムなど新たな研究課題も明確になり、ナノ粒子設計法も検討を開始した。人工培土と界面構造設計したナノ粒子、ナノカプセルを用いることで、農業による環境破壊への対策も、新たな課題も提起され、大きな新たな展開可能性も開けている。加えて、農業に不可欠なエネルギー獲得のための農業バイオマス、廃棄物を利用した発電とシステム化に関する基盤技術の検討も併せて実施し、農業生産のための統合的プロセスシステムの検討も開始した。
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今後の研究の推進方策 |
本田での実験では、根の生育状況の優位性を確認できたが、コメの収量は2019年度の異常気象による登熟期間中の日照不足もあり、ほとんど相違が認めらえなかった。2020年度は、天候のよい条件で圃場において、「さくら福姫」のバイオマス生産、収量に対する新育苗培土で生育した苗の根の成長の影響を検討するとともに、農家圃場での新育苗培土を用いた実証栽培と品種比較を計画している。一方、野菜については、開発中培地はエダマメ、インゲンの苗の生育には不向きなものの、ピーマン、キャベツ、レタス、ナスの苗生育は良好であった。新規培土の高い気相率、適度な有効水分量、少ない表面蒸発量がこれらの苗生育を良好にしたものと考え開発中培土の物理的・化学的特性を、モデル土壌との比較に基づき、引き続き明らかにする。農業生産プロセスシステム構築のため、制御モデルの構成因子のInputパラメータとしての、温度、湿度、水分量、日照、培土の構造等と、Outputデータとしての、収量、品質、生育状態など、同じFieldでの実験結果(収量、生育状態、根の張りぐわいなどの画像データ)の数値化、定量化の関係を解析し、農業プロセスシステム構築の手法開発の具体化を進める。植物生産のためのプロセス工学に加え、籾殻などの農業バイオマス、農業廃棄物を利用した人工培土設計法を人工培土の構造設計と植物成長の関係解析に基づいて発展し、より効果の高い培土設計法を確立する。 国際展開については、コロナウイルスが原因で、予定した詳細な中国、タイ、台湾での調査計画が中止になったため、国際的な展開のための総括的国際調査を実施し、ニーズの開拓を行う。
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