研究課題/領域番号 |
20K20359
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
新井 豊子 金沢大学, 数物科学系, 教授 (20250235)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノ水膜 / 準液体性 / 固液界面 / 周波数変調原子間力顕微鏡 |
研究実績の概要 |
易溶性イオン結晶であるKBr結晶への1層目の吸着と、数ナノメータ厚のナノ水膜内での溶解・析出について調べた。 FM-AFMは大気環境下にあり、KBrの劈開からFM-AFMにセットするまでの過程は、通常の実験室環境である。環境湿度は天候に左右され、最低は20%RH程度である。過去の文献からは20%RH程度では1層以下の吸着膜が形成されている。ステップと広いテラス面があれば、初期吸着過程を追いかけられると考えた。任意の湿度において、テラス上に1分子層の水膜の島は観察されなかった。低湿度では、ステップは直線的であるが、30%RH程度以上になると、曲線的になる。以上のことから、20-30%RHの低湿度では、ステップエッジにのみ水分子は吸着し、30-40%RH 程度の湿度では、1分子の吸着層が形成されていると考えられる。 70%RHから潮解湿度(85%RH)までの湿度環境では、数ナノメータ厚のナノ水膜が形成している。KBr/ナノ水膜界面の水和構造をFM-AFM像及び散逸エネルギー像観察を行った。イオンの周期性が観察できている状態で、疑似高さ一定モード(非常に弱いΔf一定フォードバックをかける)で連続的に走査を続けていると、1-3Å程度探針が試料から離れる現象が観察された。3Åの変化は、試料表面に1層のKBrが析出したと考えられる。1-2Åの変化は、散逸エネルギーの減少または増加を伴う場合と、変化が無い場合がある。イオンの周期構造が観察されている場合でも、それがベアなイオンを見ているのか、水和層を見ているのかは判別が付かない。観察している層が変化したときの散逸エネルギーの変化から、どの層を観察しているのか考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は当初からコロナ禍にあり、教員の在宅勤務、学生の登学禁止がしばらく続いた。実質的に実験が行えたのは数ヶ月であった。また、企業からサンプル提供を受ける予定であったが、県をまたぐ出張禁止が続き1年間この課題については進まなかった。 当初予定では、今年度で終了予定であったが、1年延長して、目標の達成をめざす。
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今後の研究の推進方策 |
1. 2台のPLLを用いて、FM-AFM像取得時にバイアス電圧をCPD電圧に制御するケルビンプローブフォース顕微鏡法(KPFM)を導入して、表面構造と、表面電荷状態をナノメータスケールで同時取得する。 2. Si基板洗浄における帯電現象の解明 Siデバイス製作過程でSi基板を超純水で洗浄後に、基板が帯電することがある。Si基板には、ナノ水膜が形成されていると考えられる。帯電したSi基板を湿度制御環境で、FM-AFM/ KPFM観察し、帯電状態を調べ、ナノ水膜の特質および帯電起源を解明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画が遅れたために次年度使用額が生じた。
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