研究課題/領域番号 |
18H05344
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
今野 巧 大阪大学, 理学研究科, 教授 (50201497)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | イオン結晶 / 超分子科学 / 結晶工学 |
研究実績の概要 |
イオン結晶中において、各イオン種はクーロン相互作用により強く固定され、通常、自由に動き回ることはできない。本研究では、金属超分子をベースとするナノ構造化学を駆使して、金属イオン種が結晶格子中を自由に動き回るように設計した「イオン性金属超分子ナノ構造体」の開発を進めている。まず、昨年度と同様の手法により、3分子の含硫アミノ酸(L-システイン)が窒素および硫黄原子でロジウム(III)イオンおよびイリジウム(III)イオンに配位した単核錯体(錯体配位子)を合成、単離した。今年度は、新たに、コバルト(III)イオンに配位した単核錯体についても合成した。得られた錯体については、可視紫外吸収スペクトルや円二色性スペクトルなどの各種分光手法や元素分析などにより同定した。次に、昨年度のRhIII4ZnII4八核錯体の合成で得られた知見を基に、ロジウム(III)錯体配位子の代わりにイリジウム(III)錯体配位子およびコバルト(III)錯体配位子を用いて亜鉛(II)イオンとの反応を行い、アニオン性のIrIII4ZnII4八核錯体およびCoIII4ZnII4八核錯体を合成し、それらをカリウム塩の結晶として単離した。単離した多核錯体については、各種分析機器を用いて化合物の同定を行うとともに、単結晶の作製、ならびにX線構造解析によるそれらの分子構造と結晶構造の決定を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施の概要に記載したように、イオン性金属超分子ナノ構造体の構築に有用と考えられるロジウム(III) 錯体配位子およびイリジウム(III)錯体配位子に加えて、より安価なコバルト(III)錯体配位子の合成に成功した。また、錯体配位子を各種分析により同定するとともに、ロジウム(III)錯体配位子の代わりにイリジウム(III)およびコバルト(III)錯体配位子を用いて亜鉛(II)イオンとの反応を行い、アニオン性のRhIIIZnII八核錯体に加えて、同類のIrIIIZnII八核錯体およびCoIIIZnII八核錯体を新たに合成した。それらについては、カリウム塩の単結晶として単離し、単離したイオン結晶については、各種分析機器を用いて同定するとともに、水-アルコール混合溶液中では単結晶性が保持されることを確認した。また、それらの単結晶のX線構造解析から、いずれの結晶においても、多核錯体同士が水素結合による連結し合い、強固なアニオン性フレームワークを形成していることを明らかにした。さらに、結晶中のカリウムイオンが他の金属イオンに置換可能かどうかについて検討した。その結果、結晶をランタノイドイオンを含む溶液に浸すと、単結晶性を保持したまま、結晶格子中のカリウムイオンがランタノイドに置換され、ランタノイドクラスターが形成されることを見出した。従って、研究は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
上記に記載したように、カリウム塩として得られた各種錯体の結晶については、水-アルコール混合溶液中での単結晶性の保持、および単結晶X線構造解析から、結晶中における強固なアニオン性フレームワークの形成を認めている。今回得られた結晶は、アニオン性フレームワークの中に対カチオン種としてカリウムイオンが存在している。また、それらが結晶中において激しくディスオーダーしていることから、イオン伝導体としての機能が期待される。そこで、今後は、カリウムイオンの代わりに他のアルカリ金属イオンを対カチオン種として含むイオン結晶を作製し、カリウムイオンを含む結晶の場合と同様に、他のアルカリ金属イオンが結晶中においてディスオーダーしているかどうか調査する。これにより、アルカリ金属イオン種が、結晶格子中を自由に動き回るように設計した「イオン性金属超分子ナノ構造体」の創製を追求していく。
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備考 |
今野研究室(錯体化学研究室)ホームページ http://www.chem.sci.osaka-u.ac.jp/lab/konno/
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