研究課題
材料面の成果として、従来不可能であった室温以上のキュリー温度(TC)をもつ新しいp型強磁性半導体(GaFeSb)およびn型強磁性半導体(InFeSb)の作製(分子線エピタキシー成長)に成功し、その基本物性を明らかにした。p型強磁性半導体(GaFeSb)については、半導体で初めて室温で強磁性共鳴を観測した。また400 Kを超える高いTCを実現し、そのバンド構造や磁気異方性を明らかにした。n型強磁性半導体(In,Fe)Sbについては、キャリア(電子)誘起強磁性であることを示し、電界効果トランジスタ構造を作製してゲート電圧で磁性を制御することに成功した。Fe添加強磁性半導体では、n型強磁性半導体が実現できただけでなく、そのTCは半導体の禁制帯幅が小さくなればなるほど高くなる傾向があること、またFe由来の不純物準位(不純物バンド)の位置が伝導体端または価電子帯端に一致するときに高くなることを示した。すでに作製に成功していたn型強磁性半導体(InFeAs)の研究成果と合せて、Fe添加III-V族強磁性半導体新しいデザインルールを創出した。物性機能面の成果として、すべて半導体でできた非磁性半導体(InAs)/強磁性半導体((Ga0.8,Fe0.2)Sb)からなる二層ヘテロ接合を作製し、新しい電子伝導現象(大きな磁気抵抗効果)を発見した。さらに、この接合をトランジスタに加工しゲート電圧によってInAs薄膜中の波動関数を変化させ、近接効果による磁気抵抗を大きく変調することにも成功した。本研究は、ゲート電圧により電子状態を変調できるという半導体の利点に、強磁性体の持つ不揮発な性質を付与できたこと、さらに磁化の情報を大きな磁気抵抗効果という手段で読み出すことができることを示したという点で、強磁性半導体を用いた次世代スピントロニクス・デバイスの実現に向けて新たな道筋を示した。
1: 当初の計画以上に進展している
従来不可能であった室温以上のキュリー温度(TC)をもつ新しいp型強磁性半導体(GaFeSb)およびn型強磁性半導体(InFeSb)の作製に成功し、その基本物性を次々に明らかにするとともに、非磁性半導体/強磁性半導体からなるヘテロ構造を作製し新しい物性機能と磁気抵抗効果を発見する(Nature Physicsに出版)など、当初計画以上に成果を挙げている。
現在は新型コロナウイルスの影響で大学で実験研究をすることが禁止され、すべての学会が中止されているが、解禁されたら直ちに実験を再開し、狭ギャッ強磁性半導体の物性機能の研究開発とそのデバイス応用の研究を一層進める予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (35件) (うち国際学会 19件、 招待講演 14件) 備考 (3件)
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