研究実績の概要 |
強磁性半導体の長年の問題点をすべて解決し、大きく研究を進展させた。すなわち、1) p 型とn 型の強磁性半導体を両方実現、2) キュリー温度TC を室温より上げ、室温で強磁性を示す半導体を実現し、物性機能を最適化、高度化、3) 強磁性の起源に関するおおよその統一的な理解を得て物質設計指針を確立、このための新しいFe 添加強磁性半導体:n 型(In,Fe)As、n 型(In,Fe)Sb、p 型(Ga,Fe)Sb(いずれもTc > 300 K)とそのヘテロ構造のエピタキシャル成長に成功し、様々な物性機能を実証した。強磁性半導体を用いたヘテロ接合、新物質の代表的成果として以下が挙げられる。 ・InAs半導体結晶中に鉄(Fe)原子をほぼ1原子層の平面内に配列したFeAs/InAs単結晶超格子構造の作製に世界で初めて成功し、様々な新しい物性を明らかにした。 ・分子線エピタキシー(MBE)法を用いて、格子定数が近いIII-V 族半導体InSb基板(001)上にダイヤモンド型結晶構造をもつα-Sn 薄膜(膜厚:21~56 原子層)を成長させることに成功した。InSb の格子定数はα-Snより0.15%小さいため、α-Sn層に圧縮歪がかかることによりトポロジカル・ディラック半金属になることを示した。 ・非磁性半導体(InAs)/強磁性半導体((Ga0.8,Fe0.2)Sb)からなる二層ヘテロ接合を作製し、新しい電子伝導現象と巨大な磁気抵抗効果を発見した。磁気抵抗比は最大で80%に達し、金属や絶縁体を用いた同様の構造に比べて800倍大きな値を観測。さらに、トランジスタを作製しゲート電圧を印加することで、巨大磁気抵抗効果を変調、すなわち、電流と磁性の結合を電気的手段によって制御できることを示した。さらに、巨大な奇関数の磁気抵抗効果を発見し、その機構を解明、好感度磁気センサへの応用の可能性を示した。
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