研究課題/領域番号 |
18H05346
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
関口 康爾 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (00525579)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | スピントロニクス / スピン波 / マグノン |
研究実績の概要 |
磁性体には磁石に代表されるようにエネルギーゼロで情報を保持できる特性があり、その性質と同様に低エネルギーで動作が可能な非電荷キャリア(=マグノン)が存在する。本研究では世界に先駆けて、マグノンを使って、電流ゼロ信号演算を可能にする非電荷トランジスタを実現することを目標としている。 初年度は代表者の異動に伴って、研究環境の整備と、磁性絶縁体のスパッタ合成と微細化に取り組み、ハイブリッド非電荷トランジスタ材料の合成の実験を始めた。 マグノントランジスタ研究を加速するためには、マグノン伝搬における周波数変調および超長距離伝搬の二つが鍵となる。これらの基盤となる磁性絶縁体を自在に操るため、スパッタ装置の再立ち上げと、作製条件の調査を開始した。高速マスクレス露光装置とスパッタによる微細化の基礎技術を完全に復旧し、ガーネット結晶ターゲットおよび基板、アニール機構の選定を完了した。必要となる超薄膜Co薄膜の作製も行い、マグノン分散の光学的評価にも成功した。 一方の、マグノン輸送媒体でのマグノン周波数変調に関しては、ガーネット単結晶に対する動的マグノニック結晶を作製することで、特定周波数のバンドパス構造を作ることが、オシロスコープを活用した実時間スピン波伝搬測定で実現することができた。さらにガーネットに磁気ソリトンを作製することができ、超長距離スピン信号伝搬の基礎を構築することができたと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マグノントランジスタ構築には、磁性絶縁体のナノスケール構造化およびマグノン伝搬特性変調の技術に関する詳細な知見が必要となる。代表者の異動という予期しない状況が出現したが、本研究では、ガーネットをスパッタ合成するために、装置立ち上げ、ターゲット、およびアニール機構を考案・開発するスタートを切ることができた。さらに、本研究で当初予定していた博士研究員雇用に関しては、電気計測、制御に長けた電子情報工学科の学生が多数研究室に参加し、研究人員の確保ができたため、見送った。 マグノン伝搬変調という点に関して、マグノンバンドの構築および磁気ソリトン形成という基礎的な技術を獲得することができた。また、要素技術であるCo超薄膜作製にも取りかかることができた。以上の進捗により概ね順調という評価に至った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度で準備したスパッタ・描画技術を活用して、ガーネット素子のナノスケール化と、複合構造によるマグノニック機能を創出できるかの応用物性研究を行う。マグノン論理演算素子の作製にはナノスケール化が必須であるが、ナノスケールガーネットを活用すれば従来技術で到達できない小型化が可能性と見込まれる。一方、研究技術開発の点ではスパッタしたガーネットの単結晶化に大きな努力を要しているが、今後この問題点を解決する鍵を探索する。Co超薄膜によるハイブリッド化に関して、次年度より電圧によるマグノン制御に本格的に取りかかる。超薄膜Co試料のスパッタターゲットの整備や特性評価などの準備はできており、ナノ構造化と電界効果を推進し、世界初のマグノンの電圧ゲート制御を目指す。ハイブリッドトランジスタの基礎構築を目指す。
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