研究実績の概要 |
炭素の酸化還元を軸とし、高温電気化学を用いた燃料電池/蓄電池のハイブリッド型蓄電デバイスを新たに提案する。炭素のエネルギー密度は重量基準で32.8kJ/g、体積基準で66 kJ/cm3でありリチウム(40.7kJ/g, 20.8 kJ/cm3)と同等なため、リチウムイオン電池の数倍、リチウム空気電池と同レベルの蓄電が原理的には可能である。本研究では、電気化学反応と高温の熱平衡反応を組み合わせて利用することで、電気化学的な反応だけでは実現困難な「C+O2の酸化還元によるストレージ法」を「カーボン空気二次電池」として提案し、基本概念を実証して、カーボン空気二次電池の可能性を明確にすることを目的とする。2019年度は、特に充電時の炭素析出のメカニズムについて考察した。また、「カーボン空気二次電池システム」に求められる電極について、要件や開発の方向性などについて検討した。 2020年度は、高CO分圧かつ炭素析出が起こりやすい雰囲気下での電解特性について、複数の材料の適性を検討した。また、ガス濃度を規定した系における電気化学評価を行い、結果を照合して、より詳細な反応メカニズムを検討した。電極酸化物材料の違い及び、電極構造の違いが電解特性に与える影響を検討した。100%CO2の電解に対してどのように特性が変化するかを検討し、材料だけでなく多孔度などの構造の違いの依存性が高いことを確認した。水素燃料電池及び水電解において、ZrO2系電極とCeO2系電極の違いがCO2電解特性に与える影響を調べた。 2021年度は、改良した機器を用いて電極の違いの影響を評価した。また、蓄エネルギーシステムとしての優位性を理論的に検討した。充放電反応とその前後における、電気エネルギー、熱エネルギーの収支に関して理論値をもとに定量化し、熱損失を含めた最大理論効率でH2蓄エネルギーに対する優位性を明らかにした。
|