研究実績の概要 |
強いS-T吸収を有する新たなレドックス光増感剤の開発を目指し、異なる二種類の三座配位子を有するルテニウム(II)錯体、オスミウム(II)錯体およびイリジウム(III)錯体を合成し、それらの分光学的性質とレドックス光増感能を精査した。 4'-methyl-2,2′:6′,2′′-terpyridineを有するオスミウム(II)錯体は、顕著なS-T吸収帯により可視光の全波長領域で吸収を示した。ルテニウム(II)錯体触媒と共存させると、λex > 770 nmの近赤外光のみを照射してもCO2を光触媒的にHCOOHへと還元した。 シクロメタレート配位を導入したN^C^NおよびN^N^C型の三座配位子を有するイリジウム(III)錯体は、弱いながらもS-T吸収を示し550 nmまでの可視光を吸収した。この光増感剤は、上述のルテニウム(II)錯体やオスミウム(II)錯体より強い還元力を有するため、より多様な触媒と組み合わせることができる。計算化学による検討から、この錯体のS-T吸収が弱い要因は、フロンティア軌道へのイリジウムの寄与が、ルテニウムやオスミウムと比較して小さいことであることが明らかになった。 また、2,2′:6′,2′′-terpyridineの誘導体とbis(N-methylbenzimidazolyl)pyridineを配位したルテニウム(II)錯体を、触媒と連結した超分子光触媒を開発した。この複核錯体はλabs < 750 nmまでの可視光を吸収し、CO2をCOあるいはHCOOHへと光触媒的に還元した。
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