研究課題
当該年度では、理論的に励起状態で大きな構造変化が起こると予測されている縮環型アゾベンゼンホウ素錯体に関して、ホウ素上の置換基をフッ素原子からよりかさ高いベンゼン環誘導体に変更するという戦略により、各種化合物を合成した。すると、予測通り、いずれも希薄溶液状態で発光性を示さず、固体状態で大きく発光性を向上させるAIE性を示すことが分かった。さらにこれらの分子は結晶状態で発光強度を増幅させるCIEE性も有することが分かった。共役系高分子化することで発光波長は近赤外領域に到達し、800nm近い発光波長でも絶対蛍光量子収率が10%近い値が得られた。以上により、AIE性と共役系高分子の組み合わせが高効率固体近赤外発光特性の実現に有用であることが判明した。続いて、励起状態で大きな構造変化を示し、AIE性やCIEE性を示す縮環型アゾメチンホウ素錯体についても共役系高分子の合成を行った。当該年度では、その側鎖のアルキル鎖の長さを変えることで、共役系高分子薄膜における刺激応答性の発現に成功した。具体的には、アルキル鎖を短くして分子間相互作用を起こしやすくした上で、塩化メチレンを用いた溶媒アニーリング法により、高分子薄膜の発光波長が40 nm以上長波長シフトするとともに発光効率が低下しないという結果を得た。これは、適度に湾曲した柔軟な構造を有しAIE性やCIEE性を示す縮環型アゾメチンホウ素錯体の構造が、刺激応答性と高効率固体発光の両立に効果的であったと考えている。以上により、励起駆動型元素ブロックを用いることで、従来設計では実現困難であった機能性材料の創出に成功した。
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