研究課題/領域番号 |
18H05359
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
黒田 俊一 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (60263406)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 匂いの定量 |
研究実績の概要 |
嗅覚情報だけはヒトが感知可能な匂い分子全て(数十万種類)を表現する基本臭が存在しないため、「正確な表現と再現」が困難であった。一方、食品、飲料、醸造品、香粧品等のヒトが直接触れる製品開発において、味覚と嗅覚に基づく官能試験は非常に重要であるが、試験官の資質に大きく依存するため、再現性やハイスループット性が極めて低く、何よりも官能試験結果の正確な共有が困難であった。我々は嗅覚情報の「正確な表現と再現」を実現するためには、まずはヒトが感じることができる匂い分子全てを正確に測定するための「センサー」と「新しい表現方法」を開発する事が必要と考えた。前年度に完成した「ヒト嗅覚受容体発現細胞アレイ」のプロトタイプで匂いを測定したところ、カルシウムイオン濃度の変動を1細胞毎に取得することができた。このプロトタイプをもとにアレイ基盤の改良を行い、嗅覚受容体の発現効率、匂い応答効率の改善を行った。また、センサーとして用いる細胞の改変を行い、これまで用いていたカルシウムインジケーターFluo4に代わる蛍光タンパク質を発現させたところ、これまでよりも低濃度の匂い分子を検出できるようになった。アレイ作成の各段階の条件検討を行い最適化も併せて実施した。しかしながら、低濃度で気体中に存在する匂い分子については、ヒト嗅覚受容体発現細胞アレイで測定できなかった。そこで捕集材により匂い分子濃縮することにより、ヒト嗅覚受容体発現細胞アレイで測定することを可能とした。以上により匂いを表現するために必要なデータを取得するセンサー部分の完成に至り、次年度(最終年度)において官能試験と比較して、匂いの表現方法を検討するための準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全ヒト嗅覚受容体を網羅した測定データをヒト嗅覚受容体発現細胞アレイにより取得できており、最終年度で応答データを官能試験に関連付けて解釈することが可能な状況となっている。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに確立した嗅覚受容体センサーを用いて、食品や環境の匂いを測定する。まず、匂い分子の濃縮手法を確立するために各種匂い分子捕集材、およびそれら捕集材を用いた時の匂い分子脱着のための加熱、溶媒による溶出の条件についての最適化をおこなう。また、嗅覚受容体センサーで得られたデータから官能に結び付くような情報をカルシウム濃度波形から抽出することを目指す。
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