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2019 年度 実績報告書

L体およびD体のホモポリ-γ-L-グルタミン酸の合成とメカニズム解明

研究課題

研究課題/領域番号 18H05360
配分区分補助金
研究機関神戸大学

研究代表者

石川 周  神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 准教授 (30359872)

研究分担者 戸谷 吉博  大阪大学, 情報科学研究科, 准教授 (70582162)
研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2023-03-31
キーワードγ-L-PGA / γ-D-PGA / アセトイン合成遺伝子 / 枯草菌
研究実績の概要

(1) γ- PGA 合成遺伝子のpgsBCだけをゲノム上から発現させた場合にはγ-PGAの生産は検出されなかったが、別領域からPgsAを発現した場合にはγ-D/L-PGAの過剰生産が確認できた。様々な長さのPgsAのN末端領域をゲノムの別領域から発現させた結果、N末端の膜貫通領域のみを発現させただけでも高分子量L-γ-PGAを過剰生産することが判明した。この結果は、PgsBとPgsCだけではγ-PGA合成酵素複合体としては不安定であり、その安定化にはPgsAのN末端領域が必要であること、また、PgsAのC末端領域はγ-PGAのD-グルタミン酸の挿入に必要であるという我々の仮説を支持している。
(2)γ-D-PGA 生産変異株の候補株が、PgsAに点変異を有していることを突き止めた。
(3) 枯草菌はグルコースを含む培地で培養すると、最初に酢酸を、酢酸が蓄積するとアセトインを細胞外へ排出するオーバーフロー代謝が起こる。これは、アセトイン合成酵素遺伝子alsS-alsDオペロンが、その転写を活性化するAlsRが「細胞内の酢酸の蓄積を感知する」ことによりはじまる現象であると考えられていた。しかし我々の前年度までの遺伝学的な解析によりAlsRが酢酸ではなくアセチルCoAを感知して転写を活性化することがわかってきた。今回、AlsRによるalsSプロモーターの活性化をGFPレポーターにより経時的にモニターするシステムを構築し、酢酸合成経路、アセチルCoA合成遺伝子の破壊株におけるAlsR活性化を観察することにより、AlsRが酢酸ではなくアセチルCoAを感知して転写を活性化する確かな証拠を得ることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

「1.γ-PGA の合成は PgsBC だけでも可能で、その生成物は γ-L-PGA となる、2.N末端側は、PgsBC 複合体の安定化、それによるγ-L-PGA 生産性の向上・高分子化に関わる、3.PgsA のC末端領域が γ-PGA への D-グルタミン酸の挿入を担う、というメカニズム」という仮説に関して、証明することができたことから、計画していた変異株の作製は概ね順調に進んでいると判断した。さらに、γ-D-PGA 生産株の候補株の変異がPgsAにあることを突き止めた。バイオプロダクション細胞の最適化に重要であると考えている、グルコースからグルタミン酸合成のフラックスを制御するシステムに関して、AlsRがアセチルCoAにより活性化することを見出し、現在は、それを利用した代謝フラックスの制御システムも進めている。しかし、「高分子 γ-D-PGA を生産する方法を枯草菌で確立する」と「バイオプロダクション細胞の最適化」は達成していないので、総合して「おおむね順調に進展している」と評価した。

今後の研究の推進方策

「バイオプロダクション細胞の最適化」に関して、「厳密な細胞分化の抑制」を実現するために、SigH破壊株、Spo0A破壊株を作成し、レポーター解析を実施したので、トランスクリプトーム解析、および、フローサイトメーター解析により、細胞分化の抑制を評価し、実際にγ-PGAの増産に寄与するかを検証する。
「アセトイン・酢酸による物質生産抑制の解除」に関しては、アセチルCoAが蓄積するとグルコースの取込を抑制するフィードバック制御がかかるシステムを構築する。これにより、オーバーフロー代謝による炭素源の損失を抑制し、効率よくγ-PGAを生産するシステムを構築する。
γ-PGA合成の分子メカニズムの詳細を解明するために、γ-PGA合成酵素複合体と、生産されるγ-PGAの種類の関係性を明らかにする。
γ-D-PGA 生産変異株の候補株の解析を進め、また、PgsAの過剰生産、これまでに判明しているD-グルタミン酸含有量が多いγ-PGAを生産するγ-PGA合成酵素の解析を進めることにより、γ-D-PGA 生産を実現するための確かな方法論を確立する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件)

  • [国際共同研究] Newcastle University/entre for Bacterial Cell Biology/Jeffery Errington's Lab(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      Newcastle University/entre for Bacterial Cell Biology/Jeffery Errington's Lab
  • [雑誌論文] A bacterial cell factory converting glucose into scyllo-inositol, a therapeutic agent for Alzheimer’s disease2020

    • 著者名/発表者名
      Michon Christophe、Kang Choong-Min、Karpenko Sophia、Tanaka Kosei、Ishikawa Shu、Yoshida Ken-ichi
    • 雑誌名

      Communications Biology

      巻: 3 ページ: 1-7

    • DOI

      https://doi.org/10.1038/s42003-020-0814-7

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Production of <i>scyllo</i>-Inositol: Conversion of Rice Bran into a Promising Disease-Modifying Therapeutic Agent for Alzheimer’s Disease2019

    • 著者名/発表者名
      YOSHIDA Ken-ichi、ISHIKAWA Shu
    • 雑誌名

      Journal of Nutritional Science and Vitaminology

      巻: 65 ページ: S139~S142

    • DOI

      10.3177/jnsv.65.S139

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] クエン酸の殺菌メカニズムの解明とそれを利用した新規プロトプラスト形質転換法の開発2019

    • 著者名/発表者名
      山本 純也、吉田 健一、石川 周
    • 学会等名
      日本農芸化学会関西・中部支部2019年度合同神戸大会
  • [学会発表] ノシトール異性体を相互変換するコンビナトリアルエンザイモロジー2019

    • 著者名/発表者名
      牧野恒平、石川周、吉田健一
    • 学会等名
      日本農芸化学会関西支部第511回講演会

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公開日: 2023-12-25  

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