研究課題/領域番号 |
18H05364
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
近藤 直 京都大学, 農学研究科, 教授 (20183353)
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研究分担者 |
中西 弘明 京都大学, 工学研究科, 講師 (50283635)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | スペクトル拡散音波 / 複合航法システム |
研究実績の概要 |
本研究では、スペクトル拡散(SS)音波測位システムを利用した小型分散ロボットの航法システムを開発する。小型で複数台の対象を計測するために、計測範囲にスピーカを設置し、計測対象にマイクを搭載するGPS-likeなコンフィギュレーションのシステムを構築した。さらに、IMU、地磁気センサ、気圧センサのデータとSS音波のデータを同期させながら取得する受信機の開発を行った。 また、SS音波測位システムの精度およびロバスト性を向上させるために信号処理の研究を行った。まず、GPS-likeコンフィギュレーションでは、SS音波同士の干渉により、計測範囲が限定されることが問題になる。そのため、符号分割多重接続(CDMA)、周波数分割多重接続(FDMA)、時分割多重接続(TDMA)の3つの多重接続方法を試し、SS音波同士の干渉緩和の評価を行った。グリーンハウス内で8 m x 22 mの4隅にスピーカを設置し、その中でマイクの静止の位置計測を行った結果、CDMAでは20%程度の計測範囲でしか計測することができなかった。一方、FDMAでは60~80%程度、TDMAでは100%の範囲で計測を行うことができた。また、計測精度においては、2次元位置の誤差が55 mm未満の範囲が、FDMAでは40%~70%程度であったのに対し、TDMAでは全ての位置で55 mm以下であった。静止位置の計測ではTDMAが最も良い結果となったが、今後、移動体の計測を行う場合には、TDMAを利用することによる計測遅延が課題になる。また、2つのマイクロフォンを用いた方位計測の精度評価を行った。グリーンハウス内の6 m x 15 mの範囲で計測を行った結果、1.58±0.86°の誤差で方位を計測できた。 また、クローラ型のロボット、マルチコプタの試作を行った。今後の航法システムの評価および自律移動試験に用いる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小型で複数台の対象を計測するために、計測範囲にスピーカを設置し、計測対象にマイクを搭載するGPS-likeなコンフィギュレーションのシステムを検討している。そのことにより、SS音波同士の干渉の影響、マルチコプタの雑音の影響が大きくなり、その対応に時間を割いている。SS音波同士の干渉の影響については、上記の実績の概要で述べた通り、3つの多重接続方法を検討し、TDMAやFDMAを併用すると計測可能な範囲を広げることができることが分かってきた。ただし、TDMAでは遅延が大きくなるため、移動体の計測に影響を与える可能性がある。一方FDMAは、チップレートが小さくなることで、同じM系列周期のSS音波の場合、SS音波長が長くなり、相関処理の計算量が大きくなる。このあたりの検討を今後進めていく必要がる。また、マルチコプタの雑音に関しては、雑音の周波数特性や音圧レベルの調査を行い、SS音波のパラメータ(搬送波周波数、チップレート、M系列符号の周期)と雑音耐性の関係の評価を行っている最中である。また、新型コロナウイルス感染症の影響で計測部品が入手しにくくなったこと、実験のための出張等ができなくなったことも研究の進捗が遅れている原因としてあげられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに、GPS-likeコンフィギュレーションのSS音波測位システムとIMU、地磁気センサ、気圧センサのデータとSS音波のデータを同期させながら取得する受信機の開発を行った。今後は、そのシステムの位置と姿勢の計測精度を評価するために、モーションキャプチャを利用した評価システムの構築を行う。モーションキャプチャとSS音波測位システムの座標変換と時刻同期が重要になる。そして、クローラ型ロボットやマルチコプタに搭載し、移動中の位置と姿勢の計測精度を評価する。 また、SS音波測位システムの信号処理方法の検討も引き続き行う。特に、マルチコプタの雑音の対策および移動体の計測を行うためのドップラー補償方法について検討を行う。 また、複合航法処理の検討を進める。TDMAを用いた場合の遅延の影響の緩和、ドップラーの影響の補完方法などを検討する。
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