研究課題
平成27-28年度挑戦的萌芽研究での基礎的検討の研究結果を踏まえて、MRI環境下での使用を念頭にポリマーのさらなる改良と周辺の医療器材の開発を達成することで、将来の実臨床応用への道を拓きたい。高齢者や耐術能の低い患者に「初期の微小癌を「エタノール放出発熱ポリマー」の重合時に出るエタノールと熱で微小がんに細胞障害を惹起し、樹脂でカチカチに固めて局所に物理的に孤立せしめ制御する」方法論を着想した。日本の特許は取得済みで、研究アイデアの新規性は認められている。さらに国際的な成果とするため、米国、中国の特許権取得の交渉中である。固形癌治療剤については、東亞合成㈱との検討で、反応温度が60℃くらいと高く、硬化速度も速い樹脂の組み合わせを見出すべく、第17世代の樹脂の試作合成を試験中である。固化の状態はマイクロCT装置を現有する名古屋大学の森健策教授の協力で、ラット肺を1ミクロン単位でのCT撮影により、樹脂の肺内での効果状況を3次元のDICOM画像データとして解析し、その知見をもとに、学内の動物実験倫理を遵守して東京芝浦臓器から「ブタ肺」を購入し、硬化樹脂を研究開発した混合ノズルを用いて、肺の臓側胸膜直下に注入し硬化巣を形成せしめた。その硬化した樹脂のなかの硬化状況をマイクロCTで撮影しHE組織染色とあわせて評価検討してきた。「MRIの特徴である放射線被曝がないこと、非侵襲性であること」は大きな利点であり、当該樹脂のMRI造影効果を増加させるべく、ガドリニウムの逆ミセル混入方法などを考案し、現在、実験中である。「外来のMRI手術室で、小さく見つかった腫瘍を的確に固めて動けなくして、局所治療して、日帰りする。」ことを現実化するために、臨床応用を想定した樹脂の操作性の向上のためMRI下で使用できる冶具や安定した樹脂混合注入を実現する装置類の開発、IVR環境下での動物実験が必要である。
4: 遅れている
コロナ禍で、研究開発への企業側の協力関係の構築が、とどまったことが大変大きい。本研究は、将来の臨床応用、社会実装をめざした医工連携型の研究テーマであり、人体に適用できる樹脂の合成を本学の医学部の単科大学で実現できないため、当該分野の有力企業の協力は必須である。しかしながら、コロナ禍で東亞合成の名古屋の研究所の実稼働も止まり、面談、会議も2020年9月ごろまでは ZOOMなどもINETのセキュリティの確保の問題点から、ままならなかったため、静止状態であった。10月ごろよりZOOM会議なども可能になり、樹脂の改良とともに、研究会議も進めることのできる体制になった。温度環境により、樹脂の硬化速度と硬化状態は大きな変化をうけるので、大動物である生体ブタの実験を考えていたが、これも、コロナ禍で神戸の民間動物実験施設も休業閉鎖となっており、「動物実験全般」は再開の見込みが立たない。また、コロナ禍で、2020年4-8月頃は、民間の中小企業も、休業状態に陥ったところも多く、試作開発を依頼しようとしても、複雑で手の込んだ試作について相談できる企業がなく2液の混合を安定して実現できる「油圧注入装置の開発」については未達で、遅れている。
2液混合の固形癌治療剤については、東亞合成㈱と海外の体内注入用の樹脂などを解析し、医療用の生体材料の最前線を把握しつつ、MRIで可視化でき、かつ、37℃近辺で肺内で直径1センチに固めることのできる樹脂の組成を決定する。2液混合の注入の操作を一定化するため、MRI下での使用を念頭に、注入装置のシステム開発を完了し、大動物での臨床モデルのコンセプト実証のできる全体システムの構築を完了し、次世代の臨床使用への各種要件を企業とともに検討し、社会実装をめざしたい。
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胸部外科
巻: 74 ページ: 4-8
Interactive CardioVascular and Thoracic Surgery
巻: 30 ページ: 546-551
10.1093/icvts/ivz304