研究課題
平成27-28年度挑戦的萌芽研究での基礎的検討の研究結果を踏まえて、MRI環境下での使用を念頭にポリマーのさらなる改良と周辺の医療器材の開発を達成することで将来の実臨床応用への道を拓きたいと考え、研究開発を進めた。高齢者や耐術能の低い患者に「初期の微小癌を「エタノール放出発熱ポリマー」の重合時に出るエタノールと熱で微小がんに細胞障害を惹起し、樹脂でカチカチに固めて局所に物理的に孤立せしめ制御する」方法論を着想した。日本国特許6447858(20181101)取得済みで2022年4月26日現在、米国、中国の特許権取得係争中。固形癌治療剤2液については、スパコンでのシミュレーションを基に、混合ノズルを金型から開発した。企業との検討で、反応温度が70℃と高く、5分以内という硬化速度も速い樹脂の組み合わせを開発できた。固化の状態はマイクロCT装置を現有する名古屋大学の森健策教授の協力で、ラット肺を1ミクロン単位でのCT撮影により、樹脂の肺内での効果状況を3次元のDICOM画像データとして解析し、その知見をもとに、学内の動物実験倫理を遵守して東京芝浦臓器から「ブタ肺」を購入し、硬化樹脂を研究開発した混合ノズルを用いて、肺の臓側胸膜直下に注入し硬化巣を形成せしめた。その硬化した樹脂のなかの硬化状況をマイクロCTで撮影しHE組織染色とあわせて評価検討した。MRI下で注入時に使用する針の材質については短期GLP試験も完了し、日本国特許6975504を2021年11月10日に取得した。当該樹脂のMRI造影効果を増加させるべく、カテキン添加やガドリニウムの逆ミセル混入方法などを考案し、実験した。安定した注入のできる注入装置を金型から製作し、今後の展開に対応できるようにした。「外来のMRI手術室で、小さく見つかった腫瘍を的確に固めて動けなくして、局所治療して、日帰りする。」目標への基礎は揃った。
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胸部外科
巻: 74 ページ: 4-8