研究課題/領域番号 |
20K20388
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉川 武男 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, チームリーダー (30249958)
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研究分担者 |
江崎 加代子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (20744874)
大西 哲生 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 副チームリーダー (80373281)
豊島 学 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (90582750)
島本 知英 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (90755117)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 脂質生化学 / 統合失調症 / スフィンゴ脂質 / リン脂質 |
研究実績の概要 |
これまでの臨床研究より、統合失調症患者において白質異常と脂質代謝異常が繰り返し報告されてきたが、病態と脂質代謝の関連は不明だった。我々はこれまでの研究で統合失調症患者の死後脳の脳梁(白質)においてスフィンゴ脂質の一種であるスフィンゴシン-1-リン酸(S1P)の含量が患者群で有意に低下していること、そしてS1P受容体の遺伝子発現が上昇していることを明らかにした。本年度はS1P以外で統合失調症患者群において軽微な含量変化がみられた数種のスフィンゴ脂質について、スフィンゴ脂質含量と患者の各種交絡因子(服薬量や年齢など)との相関関係を解析した。すると、各種交絡因子との間に相関はみられなかったため、スフィンゴ脂質含量の変化は各種交絡因子の影響によるものではない可能性が示唆された。また、統合失調症群では対照群と比較してS1P含量の減少がみられたためセラミド/S1P比について検討したところ、統合失調症群の脳梁でセラミド/S1P比の増加傾向がみられた(前頭葉では変化なし)。一般にセラミド/S1P比の増加はアポトーシス・細胞周期停止の誘導や細胞生存・増殖の抑制を引き起こすと言われている。したがって、これらのイベントが脳梁において誘導されている可能性が示唆された。これらの研究成果をまとめた論文は国際誌Schizophrenia Bulletinにおいて受理、そして出版された。 また、S1P受容体の外因性リガンドを用いた行動試験を今後さらに進めるため、それぞれの外因性リガンドが血液脳関門を通過するのか解析する準備を進めた。S1P受容体下流シグナルのリン酸化解析法を立ち上げ、各種外因性リガンドについてtmaxの調査を行い最適なタイミングでマウスの脳組織を取り出した。その結果、一部の外因性リガンドについて先行研究と同様の活性化が確認できた。今後さらに詳細な研究を行うことが必要である。
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