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2019 年度 実績報告書

高感度ペプチドミクス技術を応用した疾患バイオマーカーの探索・同定

研究課題

研究課題/領域番号 18H05383
配分区分補助金
研究機関北里大学

研究代表者

七里 眞義  北里大学, 医学部, 教授 (10206097)

研究分担者 小寺 義男  北里大学, 理学部, 教授 (60265733)
研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2021-03-31
キーワードペプチドーム / ネイティブペプチド / 生理活性因子 / バイオマーカー
研究実績の概要

独自に開発したヒト血漿ネイティブペプチドームの手法によって構造決定した2000種類の前駆体タンパク質に由来するFDR1%の18552種類、FDR0%の12440種類のネイティブペプチドの配列情報を解析して、安定的な構造を有すると考えられるペプチドを数百個選択し、化学合成・高純度精製したうえ溶解性や安定性を検討し、生理活性を解析可能な因子について、実際に種々の培養細胞系を用いて細胞応答について解析を行ってきた。その結果、10数個の新規ネイティブペプチド配列に、明らかな生理活性が明らかになった。さらに、マウスを用いて摂食・飲水・行動量に対する効果を検討したところ、複数のきわめて強力な摂食制御性ペプチドを同定するに至った。これらについて、ポリクローナル抗体の作成を行い、ヒト全身主要臓器、ならびにヒト由来培養細胞系におけるペプチドの発現部位の解析を行っている。このように新規ペプチド性因子の中から、生体内で強力な内因性生理活性ペプチドを同定するプロジェクトが進展している。
さらにこれら因子について、順次、安定同位体ペプチドを合成して質量分析法を用いてヒト血中濃度を測定しつつあるが、nmol/Lオーダーでヒト血中に循環している可能性が明らかになった。そこで、ヒト血中測定系の確立もめざすべく、現在、高感度特異的抗体を作成中である。
こうした血漿中に存在する遊離ネイティブペプチドの新規生理活性因子/バイオマーカーとしての同定研究と併行して、血中の免疫グロブリン(IgG)に結合して存在する抗原ペプチドを単離して同定する新規手法を開発することができた。自己免疫機序が想定されている実際のヒト疾患と健常者血漿のIgGに結合する蛋白およびペプチドを遊離させ、質量分析にて同定することにより質量分析を用いて自己抗体を同定する有用な新手法を確立しつつある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

過去20年間にわたり、臨床的に有用なペプチド性バイオマーカーの同定や、ヒト循環血中の新規生理活性因子もほとんど発見されなかったにもかかわらず、本研究課題では現在までに、すでに10数個の新規ネイティブペプチド配列に、明らかな生理活性を有することが明らかになった。マウスを用いて行った動物実験では、複数のきわめて強力な摂食・飲水制御性ペプチドを同定するに至り、培養細胞系を用いた検討では、NF-kappaBおよびサイトカインの強力な誘導因子を複数同定しつつある。これらはいずれも、申請者らによる新手法がこれまで発見が困難であった新規生理活性因子、疾患バイオマーカーを、従来よりも遙かに効率的に同定できる新手法となりうることが示されている証左であるものと考えている。さらに安定同位体ペプチドを用いた質量分析法によりnmol/Lオーダーでヒト血中に循環している可能性が明らかになった。

今後の研究の推進方策

これまで同定したいくつもの新規因子について、新規生理活性因子として確定するために、遺伝子・蛋白レベルでの発現、生物学的機能、血中濃度、分子存在様式の解析を行う。
さらに、同定した循環血中ネイティブペプチドライブラリーの中から、特に翻訳後修飾やアミノ酸置換の配列情報を網羅的かつ包括的にもう一度、探索し、健常人および各種疾患のアミノ酸翻訳後修飾、アミノ酸置換情報を比較することにより、疾患診断や発症・進展予測、治療効果判定のための臨床バイオマーカーとして有用な配列を探索し、臨床的に重要と考えられる因子が明らかになりつつあるのでこれらの臨床的有用性の解析を行う。
また、循環血中ペプチドのアミノ酸配列決定のためのペプチドーム解析も継続しながら、今後、オーファン受容体や創薬シーズ探索研究者のためにリガンド情報を公開する予定である。本計画は研究代表者・分担者だけが新規バイオマーカーを発見するための目的で行うのではなく、その成果を広く国内外の研究者が自由に末永く新規生理活性因子の同定や創薬研究のためのシーズ探索に活用できるよう、新たに国際的なネイティブペプチド情報データベースを構築する計画である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件)

  • [雑誌論文] Oxidised Met147 of human serum albumin is a biomarker of oxidative stress, reflecting glycaemic fluctuations and hypoglycaemia in diabetes.2020

    • 著者名/発表者名
      Momozono A, Kodera Y, Sasaki S, Nakagawa Y, Konno R Shichiri M
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 10 ページ: 268

    • DOI

      10.1038/s41598-019-57095-2

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Molecular form and concentration of serum α2-macroglobulin in diabetes2019

    • 著者名/発表者名
      Yoshino S, Fujimoto K, Takada T, Kawamura S, Ogawa J, Kamata Y, Kodera Y
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 9 ページ: 12927

    • DOI

      10.1038/s41598-019-49144-7

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Identification of plasma binding proteins for glucose-dependent insulinotropic polypeptide.2019

    • 著者名/発表者名
      Hoshiyama A, Fujimoto K, Konno R, Sasaki S, Momozono A, Kodera Y, Shichiri M
    • 雑誌名

      Endocrine Journal

      巻: 66 ページ: 621-628

    • DOI

      10.1507/endocrj.EJ18-0472

    • 査読あり / オープンアクセス

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公開日: 2023-12-25  

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