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2018 年度 実績報告書

他家iPS細胞を用いたHLA適合移植後の新たな拒絶機構の解明と克服法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 18H05385
配分区分補助金
研究機関広島大学

研究代表者

大段 秀樹  広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 教授 (10363061)

研究分担者 田中 友加  広島大学, 医歯薬保健学研究科(医), 准教授 (90432666)
井手 健太郎  広島大学, 病院(医), 助教 (50511565)
大平 真裕  広島大学, 病院(医), 助教 (30397947)
田原 裕之  広島大学, 病院(医), 助教 (30423354)
研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2021-03-31
キーワードヒトiPS細胞 / アロ免疫機構 / SIRPα / 遺伝子多型 / 間接認識経路
研究実績の概要

我々は、特定の成熟期のNK細胞(maturational stage 4)にTNF-related apoptosis inducing ligand (TRAIL)-death receptor (DR)系を介した強い抗腫瘍活性を誘導できることを見出した。最近、ヒトiPS細胞からstage 4 NK細胞 (iPS-NK細胞) を誘導することに成功、様々な癌種に対する抗腫瘍効果をin vitroで確認した。本研究では、癌免疫療法の臨床応用に向けて、HLA3座一致の他家由来iPS-NK細胞がHLA非依存性に拒絶を被る機序を解明し、その克服法の開発を目的としている。
従来、自然免疫応答には同種異系 (アロ) 抗原の認識機構は存在せず、移植臓器の拒絶反応はもっぱら獲得免疫応答が担うと考えられていた。最近、ドナーの単球に発現する阻害受容体シグナル制御蛋白signal regulatory protein α(SIRPα)の遺伝子多型がレシピエントの細胞表面に発現するCD47(インテグリン関連蛋白)との親和性に影響し、主要組織適合性抗原 (MHC)に依存しない活性化シグナル伝達が惹起されるという新規のアロ認識機構がマウスモデルで証明された。SIRPα-CD47システムはマクロファージや樹状細胞の自己寛容機構として知られる。平成30年度の研究において、ヒト-ヒト間においてもSIRPα遺伝子多型がHLA非依存性のアロ認識機構として作動し、臨床肝臓移植後の拒絶反応の発症率を関連することを解明した。すなわち、ドナーのSIRPα遺伝子多型がレシピエントの細胞表面に発現するCD47との親和性に影響し、HLA非依存性アロ認識機構がヒトにも作動するという新規拒絶機構が示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

SIRPαは細胞外に3つのイムノグロブリン様構造をもつ受容体型蛋白質で、細胞内領域に4つのチロシンリン酸化部位があり、増殖因子や細胞接着刺激によりリン酸化を受け、SHP-2あるいはSHP-1が結合し下流シグナルとして機能する。神経や造血幹細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞、顆粒球および骨髄前駆細胞などミエロイド細胞に発現が認められる。我々が誘導したiPS-NK細胞にもSIRPαの表出を認め、SIRPα遺伝子多型がHLA非依存性のアロ認識機構として作動し、拒絶の標的となる可能性がある。さらには臨床肝臓移植のおけるドナー・レシピエント間のSIRPα遺伝子多型が拒絶反応の発症率を関連することを解明でき、順調に研究は進行している。

今後の研究の推進方策

予定通り、iPS細胞由来NK細胞移入後の獲得免疫系間接認識経路によるアロ免疫機構の解明を目的にした研究を推進する。
間接認識経路によって免疫反応を惹起するポテンシャルをもつMHC以外の抗原をマイナー組織適合抗原(Minor Histocompatibility Antigen; MiHA)と定義される。すなわち、MiHAとは患者細胞表面のHLA上に提示される細胞内タンパク由来のペプチドのうち、遺伝子多型により患者とドナー間で異なるアミノ酸配列を持ち、非自己のTリンパ球に認識されるものをいう。ヒトでは48個のHLA class I-restricted autosomal MiHAと8個のHLA class II-restricted MiHAが分子レベルで同定されている。これらの中から、HLA3座一致iPS細胞由来の他家細胞が移植後にアロ免疫応答を引き起こすimmuno-dominant MiHA (Id-MiHA)を同定する。
Id-MiHAによるアロ免疫応答を制御し免疫寛容を誘導するには、間接認識経路によって誘導されるT細胞のアロ免疫応答を特異的に抑制する必要がある。我々は、門脈を介して移入したアロ細胞は、類洞内皮細胞liver sinusoidal endothelial cell (LSEC)に貪食され、間接認識経路によるT細胞応答を特異的に抑制することをマウスモデルで証明している。本研究では、同定したId-MiHAを合成し、門脈内移入や経口摂取によりLSECに貪食させ、間接認識経路によりT細胞を特異的に寛容化し、免疫抑制薬を使用することなく移植片を永久生着させ得るか否かを探索する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2018

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] アフェレース凍結細胞からの活性化NK細胞リモデリングと抗腫瘍・抗ウイルス効果の検討2018

    • 著者名/発表者名
      田中友加, Doskali Marlen, 清水誠一, 大平真裕, 小林剛, 大段秀樹
    • 学会等名
      第54回日本移植学会総会

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公開日: 2019-12-27   更新日: 2020-07-30  

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