研究課題
単球やマクロファージに発現する阻害受容体シグナル制御蛋白α(SIRPα)は全正常細胞に発現するインテグリン関連蛋白(CD47分子)と結合し、自己寛容機構を形成する。我々は、SIRPα-CD47シグナル機構が抗原提示細胞のアロ認識に関与しているという仮説のもと、同シグナルのアロ免疫応答制御機構の解明を目的として研究を実施した。その結果、SIRPαの細胞外IgVドメインの遺伝子多型に注目し、頻度の高い2つの遺伝子型において、V1/V1遺伝型のヒト単球上のSIRPαがV2/V2遺伝型に比べCD47蛋白との結合能が低いことを明らかにした。SIRPαV2/V2遺伝型が臓器移植におけるアロ応答に及ぼす影響を解明する目的で、自験例の肝移植コホートで同遺伝子多型による拒絶の発症について解析した。複雑な遺伝子多型によりSanger法で配列把握困難な症例は、次世代シークエンスで塩基配列を同定することで、アミノ酸配列に関与する連鎖不均衡を伴った一塩基多型群によりV1, V2の亜型に分類可能なことを見出した。129名の肝移植患者の解析で、レシピエントがV1亜型を含むV1ホモ接合体である場合に、移植後3か月以内の急性拒絶反応の発症率が有意に低いことが判明した。即ち、SIRPα遺伝子多型によるアロ応答の臨床的な影響は大きく、SIRPα-CD47シグナルが新たな拒絶機構である可能性が示された。HLA一致iPS細胞由来の他家細胞が移植される場合では、間接認識経路によって免疫反応が惹起される。我々は、門脈を介して移入したアロ細胞は、類洞内皮細胞に貪食され、間接認識経路によるT細胞応答を特異的に抑制することをマウスモデルで証明している。本研究では、マイナー組織適合抗原を模倣したペプチド抗原を類洞内皮細胞に貪食させた場合、間接認識経路によりT細胞を特異的に寛容化することを確認した。
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