研究課題/領域番号 |
20K20392
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 星薬科大学 |
研究代表者 |
塩田 清二 星薬科大学, 先端生命科学研究所, 教授 (80102375)
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研究分担者 |
竹ノ谷 文子 星薬科大学, 薬学部, 准教授 (30234412)
中町 智哉 富山大学, 学術研究部理学系, 講師 (30433840)
坪田 一男 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (40163878)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PACAP / ドライアイ / 角膜上皮 / 細胞の再生・新生 / 結晶化 / スーパーアゴニスト |
研究実績の概要 |
PACAPは神経伝達物質・修飾物質さらに免疫調節因子として作用する生理活性ペプチドである。申請者はドライアイの発症にPACAPが直接関与する可能性を発見したことから、ドライアイに対する新規の予防・治療法の開発を行うことを目的に本研究を行う。本研究では既存のドライアイ点眼薬では機能がないといわれる角膜上皮・内皮細胞の再生・新生および抗炎症作用についてもPACAPの機能を明らかにすることを目的に実験研究を行なっている。PACAP点眼は2時間の持続的涙液分泌促進作用がありこれに加えて従来の点眼薬にない画期的な新規のドライアイの創薬開発を行う。最終的には画期的なドライアイの創薬を実現することが目標である。 本研究計画では、応募者の塩田グループを中心としてそのほか3つの国内グループの相互協力体制を構築し、基礎から臨床応用まで可能となる研究者を集めて共同研究を行なっている。昨年度からPACAPによる角膜上皮の再生・新生作用についての基礎研究を行なってきた。まず角膜上皮のスクラッチモデルを作成し、PACAPを点眼することで上皮細胞の修復を行うことが動物モデルで達成できた。さらにその実体研究を明らかにすべく、ヒト角膜上皮培養細胞を用いてスクラッチモデルでPACAPの作用を調べたところ、PACAPはPAC1Rを介して細胞増殖を行うことが立証された。さらにこの分子制御機構を調べたところPAC1Rの下流に核内の転写因子であるNR4A1が存在し、これをPACAPが脱リン酸化することにより上皮細胞の増殖が生じること、さらにこの因子をリン酸化すると細胞増殖が有意に抑制されることが明らかになった。 以上のことから、PACAPは角膜上皮細胞の再生および新生に直接関与していることが明らかになり、これについては特許申請を行ない、さらに論文作成を行ない論文投稿をする予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終目標はPACAP受容体のPAC1Rの結晶構造解析を行い、バイオインフォーマティックス技術を用いて新規のドライアイの予防治療薬を創薬することである。受容体の選択的特異的な抗体を作成しているがまだ成功に至っていないので、PACAPの角膜上皮細胞への生理的な作用を並行して我々は調べてきた。その結果、このペプチドには細胞の再生や新生作用のあることが脳内の海馬神経細胞であることが分かり、角膜上皮についてもこの作用を調べてみた。 昨年度からPACAPによる角膜上皮の再生・新生作用についての基礎研究を行なってきた。まず角膜上皮のスクラッチモデルを作成し、PACAPを点眼することで上皮細胞の修復を行うことが動物モデルで達成できた。さらにその実体研究を明らかにすべく、ヒト角膜上皮培養細胞を用いてスクラッチモデルでPACAPの作用を調べたところ、PACAPはPAC1Rを介して細胞増殖を行うことが立証された。さらにこの分子制御機構を調べたところPAC1Rの下流に核内の転写因子であるNR4A1が存在し、これをPACAPが脱リン酸化することにより上皮細胞の増殖が生じること、さらにこの因子をリン酸化すると細胞増殖が有意に抑制されることが明らかになった。 以上のことから、PACAPは角膜上皮細胞の再生および新生に直接関与していることが明らかになり、新たにドライアイ以外にも臨床的に角膜上皮再生の創薬に結びつく可能性のあることが実証された。これについてはすでに昨年中に特許申請を行ない、さらに現在はこれについての論文作成を行ない論文投稿(Nat Commun)の準備している。
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今後の研究の推進方策 |
PACAPは角膜上皮細胞の再生および新生に直接関与していることが明らかになり、新たにドライアイ以外にも臨床的に角膜上皮再生の創薬に結びつく可能性のあることが実証された。このことは、本犬級の当初の目的であるドライアイの新規予防治療法の開発についての副次的な成果であると言ってよい。しかし、ドライアイ患者の多くは高齢の女性で特に顕著であり、しかもドライアイによる角膜上皮の乾燥による上皮表面の円滑性の喪失、さらに上皮の増殖や肥厚による角膜内における血管新生などの弊害が起きてくることはよく知られている。従ってドライアイの進行によって角膜上皮細胞自体の変性が起きることから、それを防止することもドライアイ患者にとっては必要であることが明らかである。今回の我々の研究においてPACAPはドライアイを予防できる画期的な新規点眼薬の開発に大きく寄与すると考えられる。すでに我々は、角膜上皮の保護や再生についても特許申請を行なっており、さらに現在はこれについての論文作成を行ない論文投稿(Nat Commun)の準備している。 ところで、新規のPAC1Rのスーパーアゴニストについては受容体の結晶化をするための準備を行なっている。溶液中でこの受容体と特異的に結合できる抗体を得るために時間がかかっているので受容体の結晶化についてはまだ成功していない。しかし、これについては鋭意努力中であるので近い将来には抗体を作成し、次のステップに進むことを計画している。最終的には低分子化合物の合成まで1-2年先を見越して研究を進めていく計画を立てている。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入を予定していた、実験動物の購入費が少なく、また新型コロナ禍による学会の中止等で旅費が不要であったため次年度使用額が生じた。これらの費用は次年度に行うPAC1-Rのスーパーアゴニスト開発のための受容体タンパク質に対する抗体作製、結晶化の費用に充てる。
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