研究課題/領域番号 |
18H05387
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
天野 敦雄 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (50193024)
|
研究分担者 |
久保庭 雅恵 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (00303983)
坂中 哲人 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (90815557)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | 歯周健康検査 / 唾液検査 / ポリアミン / バイオフィルム |
研究実績の概要 |
歯周病は高い有病率を示す慢性疾患で、進行すると口腔の健康状態を著しく損なうだけでなく、糖尿病等の全身疾患に負の影響を及ぼし、医療経済に打撃を与える。これまで我々は、基礎研究・臨床研究の両面から歯周病に伴うバイオフィルム内代謝変動に関する研究を行ってきた。その結果、ポリアミン類が歯周組織の健康・不健康度を示すバイオマーカーとして応用できる可能性を見出している。現在、唾液ポリアミン類プロファイルによる高精度・歯周健康検査の実用化に向けた検証を進めるとともに、糖尿病患者を対象に、唾液・歯垢サンプル中に含まれる生体内化合物・代謝物を解析し、唾液から全身の健康状態を評価する試みを進めている。 まず当研究室が所有するGC-MSおよびUPLCを用いて全唾液から安定的に各種ポリアミン類を一斉検出する技術基盤の構築に努め、現在までに装置の保守・点検、代謝物の抽出・誘導体化等、測定系開発の最適化作業がほぼ終了した段階である。また開発した測定系を用いて予備検討を行い、歯周病由来慢性炎症を定量的に表現し得るPeriodontal Inflamed Surface Area(PISA)に対する唾液ポリアミン類との正の相関を確認した。今後は開発した測定系を用いた縦断研究を行い、個人内の歯肉炎症レベルと唾液ポリアミン類の変動を検証する予定である。一方、唾液から全身の健康状態を評価する試みに関しては、被験者からの検体採取が終了し今後解析作業を開始する予定である。これまでに得られた興味深い知見として、未治療の糖尿病患者において特徴的な唾液ポリアミンプロファイルを示すことを見出している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
連携研究者である福崎教授の研究室の支援のもと、質量分析装置を用いたin houseでのポリアミン測定系の安定的な運用に成功している。これにより、予防歯科学教室内でサンプル採取から測定・解析に至る一連の工程を完結でき、研究の飛躍的推進が期待できる。また糖尿病患者を用いた全身の健康状態を示す唾液マーカーの検討では、長期に渡る検体採取が完了した段階である。今後、歯周病・糖尿病・動脈硬化をつなぐ連関解明に向けた新規知見が得られる可能性が高い。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、高精度・歯周健康検査の実用化に向けて、昨年度開発した測定系を用いた縦断研究を行い、個人内の歯肉炎症レベルと唾液ポリアミン類の変動を検証していく予定である。一方、唾液から全身の健康状態を評価する試みについては、多変量解析の手法を駆使して解析作業を進める予定である。21世紀型の「防ぎ・守る」健康増進医療を実現するためには、患者がどの程度健康なのか不健康なのかを客観的指標を用いて明確に示すとともに、健康状態から不健康状態(疾病の発症あるいは進行)へと向かう変化を予測して先手を打つことが求められる。本研究は、上記視点からも未来の健康管理型社会の実現に向け、有用な知見を与えることが予想される。
|