研究課題/領域番号 |
20K20394
|
研究機関 | 松本歯科大学 |
研究代表者 |
小林 泰浩 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 教授 (20264252)
|
研究分担者 |
小出 雅則 松本歯科大学, 総合歯科医学研究所, 准教授 (10367617)
村上 康平 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (60791837)
上原 俊介 松本歯科大学, 歯学部, 講師 (90434480)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 骨再生 / 筋再生 / マクロファージ |
研究実績の概要 |
1. 骨折治癒過程に出現するマクロファージの解析:マクロファージを除去するクロドロネートリポソーム投与の投与は、F4/80(+); Csf1r(-)のマクロファージを減少させ、治癒過程を遅延させた。一方、Csf1r中和抗体AFS98の投与は、F4/80(+); Csf1r(-)のマクロファージを減少させず、骨折治癒過程も阻害しなかった。この結果は、F4/80(+); Csf1r(-)のマクロファージが骨折治癒過程に重要であることを示唆した。F4/80(+); Csf1r(-)のマクロファージをセルソーターで回収し、網羅的な遺伝子発現解析を行っている。 2.骨折治癒過程における骨芽細胞の分化機構の解析: 骨損傷後5日目にWnt古典経路が化活性化されたAxin2-Tomato陽性細胞が著明に増加した。クロドロネートリポソーム投与によりマクロファージを除去すると、Axin2CreTomatoおよびSp7二重陽性細胞が減少した。この結果は、マクロファージが間葉系幹細胞のWntシグナルの活性化に関与することを示唆する。リアルタイムPCR解析の結果、骨折4日後の骨組織において、Wnt4、Wnt5a、およびWnt10bの顕著な発現増加を認めた。Wntless欠損細胞は、すべてのWntリガンドを分泌できない。マクロファージ系細胞からのWntリガンド分泌の重要性を明らかにするため、マクロファージ系細胞でWntlessを欠損するマウスを作出し、解析した。Csf1eCre:WlscKOマウスは、骨折治癒過程が遅延する傾向を示した。 3.筋再生組織Mφの分化機構の解明:脛骨前筋に塩化バリウム(BaCl)を投与し、筋損傷モデルを作製した。この筋損傷モデルマウスにクロドロネートリポソームあるいはAFS98を投与し、マクロファージを除去したときの筋組織の再生を観察した。両薬剤いずれかの投与によって、筋組織再生は遅延した。この結果は、骨組織と異なり筋組織では、F4/80(+); Csf1r(+)のマクロファージが組織再生に重要であることを示唆した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
骨組織と筋組織では、再生に関与するマクロファージが異なる可能性を示した。つまり、骨組織ではF4/80(+); Csf1r(-)のマクロファージが、筋組織ではF4/80(+); Csf1r(+)のマクロファージが重要であることを示唆している。これらの細胞の遺伝子発現の特徴を明らかにするため、信州大学に設置されているセルソーターを用いて、これらの細胞画分を集め、RNAシークエンス解析を予定であったが、COVID19の第5波の蔓延により、機器が十分に使うことができず、若干の遅れを生じた。
|
今後の研究の推進方策 |
RNAシークエンス解析を行い、骨組織再生過程に重要であるF4/80(+); Csf1r(-)のマクロファージの特徴ならびに筋組織再生過程に重要であるF4/80(+); Csf1r(+)のマクロファージの特徴を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
信州大学基盤研究センターに設置されているセルソーターを使用し、マクロファージ細胞画分であるF4/80陽性;Csf1r陰性およびF4/80陽性;Csf1r陽性細胞を分取し、RNAを抽出しRNAシークエンス解析を行う予定であったが、COVID-19の蔓延に伴い、学外者の上記センターへの入室が禁じられたため、細胞の分取ができなかった。
|