研究実績の概要 |
平成30年度においては、主に人体及び種々の食品・食事試料中のトランス等脂肪酸の定量法の確立及び実試料の分析定量を行った。 まず、代表者らは、オレイン酸(n-9系)に加えて、リノール酸(n-6系)とα-リノレン酸(n-3系)の脂肪酸異性体14種(シス体を含むC18:1△9;2種、C18:2△9,12;4種、C18:3△9,12,15;8種)を標準物質として加えた全59種類の脂肪酸(C14~C22)の高精度型分析法の確立を目的として、本科研費で購入させて頂いたGC/MSの最適な分析条件の検討を行い、最適なカラム、ガス流量、昇温条件等を決定した。そして、全脂肪酸の良好な分離が確認できたことから、代表者らは高精度型のトランス等脂肪酸の同時一斉分析法が確立できた。 次に、この確立した分析法を駆使して、大阪府内のスーパーにて購入した、a) 国内外の製造会社等が異なるマーガリンやショートニング等の市販硬化油(20品目)、b) 国内外の反芻動物由来のチーズ、牛乳等の乳製品(10品目)、c) その他、大量の油脂類及び食肉類等を使用した市販加工食品を用いて分析を試みた。その結果、市販硬化油中にリノール酸及びα-リノレン酸のシス-トランス体(両異性体の中では、C18:2は△9c,12tが、C18:3は△9c,12t,15t)が高比率で検出された。 さらに、人体蓄積指標としての母乳試料(30検体)と上記の食品試料を用いて、母乳中のトランス等脂肪酸の定量を行った。その結果、すべての母乳試料中にオールトランス体以外にも、リノール酸やα-リノレン酸のシス-トランス体が検出された。但し、食品と母乳試料中のトランス及びシス・トランス脂肪酸の組成パターンは必ずしも一致しないことが観察されたことから、早急に動物実験を試み、これら脂肪酸の代謝の差異などについて検討を試みる。現在、陰膳方式で収集した食事試料を分析しており、その結果から、トランス及びシス・トランス脂肪酸の1日摂取量を試算する。
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