研究課題/領域番号 |
18H05391
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
太田 壮一 摂南大学, 薬学部, 教授 (10213729)
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研究分担者 |
中尾 晃幸 摂南大学, 薬学部, 准教授 (20288971)
杠 智博 摂南大学, 薬学部, 助教 (10783011)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | トランス脂肪酸 / シス・トランス脂肪酸 / 健康影響 |
研究実績の概要 |
代表者らは、既にオレイン酸(n-9系)に加えて、リノール酸(n-6系)とα-リノレン酸(n-3系)の脂肪酸異性体14種(シス体を含むC18:1△9;2種、C18:2△9,12;4種、C18:3種、△9,12,15;8種)を標準物質として加えた全59種類の脂肪酸(C14~C22)の高精度型分析 法を確立したことから、その分析法を駆使して、大阪府内のスーパーにて購入した、a) 国内外の製造会社等が異なるマーガリンやショートニング等の油脂類、b) 国内外の反芻動物由来のチーズ、牛乳等の乳製品(10品目)、c) そのほか、油脂類や菓子類等を含む、計7品目62種類の試料中に含まれる脂肪酸の分析を試みた。なお、食品試料の選定に際しては、過去の報告等でトランス型脂肪酸であるエライジン酸を多く含む食品を中心に購入し、一方、分析に際しては、これら食品中に含まれる上記14種の異性体を中心に詳細な検討を行った。また、血清及び母乳試料中のトランスあるいはシス・トランス型の脂肪酸の分析も行い、その異性体の解析を試みた。その結果、分析した62種の食品の中、濃度の高低差はかなりあるものの、47種の食品中にトランスあるいはシス・トランス型の脂肪酸が検出された。とりわけ、マーガリン中に油脂100g当たり0.23gの、同様にチョコレートクッキー中に2.47gの高濃度のトランス脂肪酸が検出されるとともに、異性体解析の結果より、興味深いことにはリノール酸やリノレン酸のトランス体も高比率で含まれていることが観察された。一方、母乳試料では全試料中にトランス等脂肪酸が検出されるとともに、主な異性体はエライジン酸であることが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元(2019)年度のおける進捗状況としては、おおむね順調に進展している。若干、遅れている検討課題は、母乳試料の分析検体数であり、その理由としては、試料提供して頂ける初産婦や経産婦の方々の確保が難しいためである。しかし、既に50検体以上の母乳を分析していることから、母乳試料中のトランス型脂肪酸のレベルを推定するには十分であると考えている。従って、今後、当初予期しない事態が起こる可能性もあることから、より一層、研究推進に全力で取り組む覚悟である。
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今後の研究の推進方策 |
令和2(2020)年度は、母乳試料中に蓄積性が観察されたトランス等脂肪酸摂食マウスが示す毒性影響の究明について検討を進める。トランス等脂肪酸で構成されるトリグリセリドを含む飼料を用いて、系統の異なるマウス(C57BL/6、BALB/c等:雌雄)の体重、血液、脳・各臓器・組織及び糞中の脂肪酸量・組成等の比較、並びに各種測定キットによるマウス血中の脂質代謝関連物質のパラメーターを測定し、人体高蓄積性トランス等脂肪酸の毒性影響の評価を試みる。検討手順としては、a) 毎日の体重、摂食量、糞量等を測定し、次にb) 毎週の尾採血を行い、さらに、c) 試験開始2、7、12週目には、各グループのマウスを屠殺し剖検を行い、マウスの脳・各種臓器・組織等を摘出し、また心臓から全血液を採取する。この時、脳・臓器・組織は湿重量を測定し、それらに含有のd)脂肪酸を定量する。測定対象の脳・臓器・組織としては、マウスの脳のほか、検討する臓器及び組織としては、肝臓、腎臓、脾臓、胸腺、精巣、前立腺、卵巣、子宮及び腸管膜脂肪等の脂肪組織のほか、採取血液とする(各試料は冷凍保管)。一方、上記b)で経週的に採取した血液試料は、各種測定キット等を用いて、ア) 血清中の脂肪酸量・組成、総脂質(コレステロール、トリグリセリド)量、LDL及びHDL量、また、イ) リポタンパク質リパーゼ(LPL)活性等の脂質分解酵素活性、ウ) 炎症性サイトカン(TNFα, IL6等)量やアディポネチチン量等のモニタリングを行い、それらデータ値の変動を解析する。 以上の検討結果を総合的に解析し、トランス等脂肪酸が示す毒性影響の究明を遂行する。
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