研究課題/領域番号 |
20K20397
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
曽我部 知広 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (30420368)
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研究分担者 |
臼田 毅 愛知県立大学, 情報科学部, 教授 (80273308)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 数値線形代数 / 量子計算 |
研究実績の概要 |
本課題は、数値線形代数(線形方程式、固有値問題、特異値問題)の古典アルゴリズムの研究と量子アルゴリズムの研究を行い、それらを融合・協調させるものである。その一環として、2021年度は(1)テンソル構造を持つ行列に対して、任意の場所の特異値を効率良く求めるための解法を開発した。この研究に関連して日本シミュレーション学会が主催する国際会議JSST2021にて招待講演を行なった。(2)量子アニーリングにおけるリバースアニーリング技術の動向調査、および実機・シミュレータにおいて、リバースアニーリング技術の性能の検証を行なった。(3)これまでの重要な古典アルゴリズムをまとめた著書(分担執筆)を出版した。さらに量子情報分野での重要な進展が見られた。具体的には(1)量子イルミネーションの誤り率,(2)量子受信機の誤り率特性とそのロバスト設計の規準、(3)純粋状態信号に対するBelavkin Weighted Square-root Measurementの幾何学的表現(4)非対称量子信号に対する通信路行列計算の簡単化、が成果として挙げられる。また、量子情報関係では、国際会議で7件の成果を公表するなど、アクティブに研究活動を行った。 研究環境の構築として、2021年度はアニーリング型量子コンピュータであるD-Wave 200Qの実機を用いた簡単なシミュレーションを行なった。2020年度ではゲート型量子コンピューターであるIBMQを用いた計算の経験があり、必要に応じて動作原理の異なる2つの量子コンピュータ実機で計算を行う環境を構築したといえる。 2020年度に引き続き、2021年度(2022年2月と3月)に量子情報ミニワークショップを研究分担者の臼田教授(愛知県立大学)と共にオンラインで開催し、研究成果発表を通して、数値線形代数・量子計算・量子情報理論の議論を行い、今後の方向性を含む密な情報交換・打ち合わせを行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に引き続き、数値線形代数に対する古典アルゴリズムの開発、量子情報理論からの多角的な研究が進んでおり、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
古典アルゴリズムと量子アルゴリズムに分けて簡潔に説明する。まず古典アルゴリズムに関しては、テンソル方程式に関する数値解法の開発を行う。量子アルゴリズムに関しては、整数剰余環を係数にもつ線形方程式の量子アルゴリズムを構築する。また、2022年度は古典アルゴリズムと量子アルゴリズムのハイブリッド解法の開発を行う。具体的には、変分量子アルゴリズムを基礎として、通常の古典コンピュータとゲート型量子コンピュータを併用した数値線形代数の諸問題(線形方程式・固有値問題)を解くための古典・量子アルゴリズムの研究を行う。また古典コンピュータとアニーリング型量子コンピュータの併用に向けた理論的検討を行う。さらに、2021年度に引き続き量子情報分野の研究を行い、広い視点から当該目標の達成に挑戦する。可能であれば2022年度も研究分担者である臼田教授が主催する量子情報ミニワークショップで、密な情報交換を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度と同様に主にCOVID-19の影響により、出張による情報収集ができなかったこと、および2021年度ではCOVID-19の影響下でも進めることが可能である理論研究に集中する方が良いとの判断であったため、次年度使用額が生じた。2022年度は対面開催予定の会議が増えてきたため、出張による情報収集・成果公表・研究打ち合わせに充てられる見込みが高い。
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