研究実績の概要 |
・本年度はリモート研究・計測環境を整備し,織物の視覚的質感情報から摩擦力および摩擦係数の推定モデルを構築する研究を進めた. ・三原組織織物を対象とした,視覚的質感情報(高分解能多視点多重露光画像計測によるBRDF(双方向反射率分布関数と)とBTF(双方向テクスチャ関数))と触覚的質感情報(KESによる風合い計測値)の解析結果から,経糸と緯糸方向の表面粗さの比は,織構造(経糸と緯糸の浮き糸の長さの比)を表し,同時に,摩擦係数の比と高い相関がある, また,織物の曲げ剛性は糸の屈曲と相関があることが検証された. ・対象織物(絹等のシルクライク織物)は透過率が高い半透明物体であることから,半透明繊維中の光路や光減衰に基づく光伝搬シミュレーションを構築し.実測BRDFと推定BRDFを照合して解析する方法を開発した. ・現状のBRDFから抽出したマクロな(糸表面の)表面粗さからは相対的な摩擦係数の大小しか推測できないため,半透明繊維の光伝搬シミュレーションを用いて,糸を構成する繊維毎の微視(的幾何)構造の法線を高精度に推定することにより,繊維の曲率や屈曲度およびファインな表面粗さも抽出する方法を開発し,その評価を行った.さらに,半透明繊維の光伝搬シミュレーションを用いて光沢分布(実測BRDF)を解析し,繊維の吸収係数を推定する方法を提案した. ・摩擦力を推定するためには柔軟物である指腹と織物表面の接触面積を必要とし,接触面積は織物の表面粗さだけでなく,織物が柔らかいほど表面が変形して増加する傾向がある.指腹と織物表面の接触(Stick Slip現象)を観測するために,19年度に購入した小型ロボットを用いる接触計測環境を構築した. ・織構造,糸の屈曲よる曲げ剛性,指腹と織物表面の接触面積等から推定された摩擦力および摩擦係数を用いる,織物表面をなぞる触覚シミュレーションの構築した.
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