本研究の目的は、「ひらめき」を生み出す脳内メカニズムを解明することである。その意義は、創造的な問題解決を必要とされる場面が増え、個人の創造性の向上が重要になると考えられるからである。そこで、脳内のマクロなネットワークの切り替えに着目し、多角的な高時間・高空間分解能の脳活動計測とAI技術を組み合わせ、ひらめきのメカニズムの解明することを目指した。 本研究では、ひらめきに伴う動的な脳状態の定量化を行うために、EEG-fMRI同時計測データをSPLICE法に適用し、ネットワークの抽出を試みた。しかし、EEG計測装置やEEG電極の故障により大幅に遅れが出たため、fMRI計測のみの実験に切り替え、空間的ひらめき課題であるマッチ棒クイズを行っている最中の脳活動を計測した。解析法についても、当初は教師あり学習法でのネットワーク抽出を想定していたが、データのサンプル数の問題から、教師なし学習の隠れマルコフモデルに変更し、脳状態の抽出を行った。その結果、14個のネットワークを基に10個の脳状態によって表現されることを確認した。特に、ひらめき特有の脳状態の頻度が、ひらめきを用いた時の問題の正答率と相関があることを発見した。 次に、言語的ひらめき課題においても同様の脳状態が抽出されるか検証するために、言語的ひらめき課題を開発し、脳活動計測実験を行った。その結果、空間的ひらめき課題でひらめきに特異的に関連する脳状態と同様の傾向が言語的ひらめき課題でも抽出された。問題の質が異なっても共通して使われる脳状態の定量化することができた。 本研究を通じ、日本神経科学大会において初となる「創造性の神経科学」を取り扱うシンポジウムを開催した。世界で活躍している研究者とともに議論するだけでなく、国内に創造性研究を広めるという成果を上げることができた。
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