研究課題/領域番号 |
20K20402
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
佐藤 浩太郎 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (70377810)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 高分子合成 / 高分子環境材料 / 植物由来バイオマス / 糖ケミカルコンバージョン / 二酸化炭素固定化 |
研究実績の概要 |
本研究では、天然の糖類の発酵や分解で豊富に得られるバイオマス資源に着目し、化学変換反応(ケミカルコンバージョン)により高分子原料であるビニル単量体構造(ビニルモノマー)へと誘導することで革新的機能性高分子材料群を創出することを目的とした。とくに、水溶性や耐熱性、光学活性など従来の石油化学品では入手困難な骨格をもつ天然由来物質に対して、有機合成や高分子合成(重合)反応で培ってきた技術を適応することで、汎用性のものから機能性のものまで、実用性の高い機能性高分子環境材料の創出を目指した。 本年度は以下の点に注力して研究を行った。 1) グリセロール由来の種々の機能性高分子材料開発と二酸化炭素固定化 これまでにグリセロールを原料としてケミカルコンバージョンによりビニルモノマー化・重合反応により高分子にできることを明らかにしつつあった。とくに、環状カーボネート化もしくは環状アセタール化を行い、脱水反応を経て対応するビニルカーボネートおよびビニルエーテル誘導体への変換が可能であることを見出した。今年度は、対応する石油由来化合物の重合反応性から、ビニルエーテルのラジカル共重合により主鎖にグリセロール由来の骨格をもつ高分子の合成反応について検討した。ラジカル共重合においては開環構造はほとんど導入されず、今後、カチオン重合との組み合わせにより多様な機能をもつ高分子の合成が期待される。 2)フルフラールのケミカルコンバージョンと高耐熱性高分子材料開発 フルフラールの水素添加反応によって生じるテトラヒドロフルフリルアルコールを用い、上述のグリセロールと同様の脱水反応となるケミカルコンバージョンによりビニルエーテル骨格を有するモノマーへの誘導体を合成した。今年度は本モノマーが金属フリーでリビングカチオン重合可能であることについて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一昨年度までの予備検討において、若干遅れていたが重合実験がスムーズに進行したことから順調に結果がでつつあったが、研究活動が制限される中で最終的なまとめの作業が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、天然の糖類の発酵や分解で豊富に得られるバイオマス資源に着目し、化学変換反応(ケミカルコンバージョン)により高分子原料であるビニル単量体構造(ビニルモノマー)へと誘導することで革新的機能性高分子材料群を創出することを目的としている。従来の石油化学品では入手困難な骨格をもつ天然由来物質に対して、有機合成や高分子合成反応で培ってきた技術を適応し、とくに、農業廃棄物など非可食のものから生産可能なグリセロールやフルフラールなどから実用性の高い機能性高分子環境材料を創生できることを明らかにしてきた。今後、これらの成果をまとめ公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、若干遅れていたが合成反応実験の予備検討がスムーズに進行したことから順調に結果がでつつあり、2020年9月までにグリセロール由来モノマーのポリマー合成実験を終え、2021年2月までにポリマー解析実験および最終的なまとめおよび公表に向けた論文執筆作業を行う予定であった。しかし、2020年4月以降、コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い研究活動が制限され、実験を実施することができず、合成反応実験を中断せざるを得ず、研究に遅れが生じた。今後、2021年8月までに、合成反応に必要な試薬、および必要な機器やガラス器具などの消耗品を購入し、ポリマー合成反応の再実験を実施する。その後、2022年1月までにポリマー解析実験における消耗品の購入および、学術誌の投稿料にも予算を使用する。
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