研究課題
本年度は、標的タンパク質である人血清アルブミン(HSA)上に存在する薬物結合サイトと相互作用するリガンドであることが知られるダンシルアミド基を有する新規機能性モノマー (DAEAm) を作製し、これを用いることで高いHSA認識能を有する分子インプリントナノゲル(MIP-NGs)の作製を試みた。DAEAmを用いて作製したMIP-NGsのHSA認識能を等温滴定型カロリメトリー を用いて評価したところ、HSAと選択的に相互作用することがわかった。この親和性は、PyAを機能性モノマーとして用いたMIP-NGsに比べて高い値であった。さらにHSAとの相互作用機構が異なるDAEAmとPyAを同時に用いたMIP-NGsも作製し、同様にHSA認識能を評価したところ、HSAに対する親和性がさらに向上することが明らかになった。血漿中においてMIP-NGs表面に形成されるプロテインコロナ組成の解析をSDS-PAGEを用いて行った結果、DAEAmとPyAを併用したMIP-NGs上に形成されるプロテインコロナにおいて最もHSA吸着量が多く、同時にオプソニンタンパク質であるIgGの吸着が最も少ないことが分かった。このことは、静電的相互作用がベースのPyAとタンパク質-リガンド相互作用がベースのDAEAmという異なる様式で相互作用する官能基をインプリント空間内に導入することで、標的分子に対する親和性を向上し、より安定なプロテインコロナ制御が可能となるMIP-NGsを作製できる可能性を示している。タンパク質に対するリガンドがベースの機能性モノマーを用いる分子インプリンティング戦略は、プロテインコロナを制御する分子認識材料を作製するための有効な戦略であることが示唆された。
3: やや遅れている
コロナ対策のため、研究に支障をきたしており、進捗はやや遅れている。
来年度は、MIP-NGsに金ナノ粒子を含有させたプロテインコロナを制御可能な放射線増感MIP-NGsを作製するとともに、センシング機能も付与できないか検討する。
新型コロナ対策のため、スタッフや学生の入構制限などがあり、予定していた研究の進行が遅れた結果、執行残が出たが、研究を効率よく進行させるため繰り越した。今年度はもともと、最終年度で結果を取りまとめる計画であったので、時間的余裕があり、昨年度に未達成に部分については今年度の研究期間内に実行可能である。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (2件)
Langmuir
巻: 36 ページ: 10674-10682
10.1021/acs.langmuir.0c00927