研究課題/領域番号 |
19H05472
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
茅 暁陽 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (20283195)
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研究分担者 |
藤代 一成 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (00181347)
柏木 賢治 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (30194723)
郷 健太郎 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (50282009)
豊浦 正広 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (80550780)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 加齢黄斑変性 / 変視症 / Corrected Reality |
研究実績の概要 |
加齢黄斑変性症(AMD,Age-Related Macular Degeneration)は,年齢を重ねるに従って網膜の中心に位置し視力の中核的機能を担う黄斑に異常が生じ,ものが歪んで見え(変視)たり,視界の中心部が暗く(中心暗点)なったり, QOV (見え方の質,Quality of Vision)が著しく低下する病気である.本研究では,老齢者でも患者自らが身近なPC・携帯端末等を用いて自身の症状を手軽に検査でき,その結果に基づいて,日常生活の場面ごとに個人の視覚特性に合致したコンテンツを提示することにより,視野の歪みを軽減し,中心暗点で消失した情報を補い,患者のQOV ひいてはQOL まで大幅に改善させられるような情報工学技術の提案を目的とする.本研究は,A:視界特性同定,B:視界矯正/補完,C:症状―病態の相互予測の3 部から構成されているが,初年度である令和元年度は主にAとBに焦点を充て基本実験とアルゴリズムの設計・実装を行った.Aについては「患者が直線を歪んだ線として知覚する」事実を利用し,患者に直線と知覚するまで変形を反復させ,視界の歪みを定量化する手法を開発した.また高齢者でも簡単に操作可能な入力ディバイスのプロトタイプを作成し,その有効性を実験により示した.その成果をまとめた論文VR/AR分野のもっとも歴史ある国際会議の一つであるCyberworls2019に採択された.また,誘導マークへの注視を強要せず,患者の視線を追跡することにより視野を計測する方法に関する基礎検討も行った.Bについては中心視野も一部失われる同名半盲について,残された視野に情報ウィンドウ重畳表示し,欠損情報を補完する技術を開発し,情報ウィンドウの最適位置とサイズを実験により明らかにした.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度においてすでに論文が国際会議に採択され,よい成果が得られている.また,視線追跡による視覚特性の特定と評価に関連する基礎実験も多く実施し,次年度以降の研究に必要なデータと要素技術を準備することができた.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,前年度に開発した視界の歪みを定量化する手法の改善を行うと同時,計測した歪みに合わせて画像を事前に逆報告に変形させることで補正を行う技術を開発する.患者は高齢者である場合が多いため,歪み計測時間の短縮が極めて重要である.また,補正に関しては注視が起きてから変形を行うのでは,めまいを引き起こす可能性もあるため,代表的な視覚タスクについて視線の動きの特性を実験により明らかし,視線を事前に予測してみる瞬間にはすでに補正した画像が提示されているような新しい補正方法を開発する予定である.一方,視野の測定については,繰り返し実験が可能となるように,中心暗点も含め,視線と連動して視野の欠損をシミュレーションする方法を確立し,それを利用して誘導マークを不要とする視野測定方法を開発する.また,情報窓を用いた補償方法をさらに改善すると同時に,残る視野の縁に欠損領域の情報を知らせるインディケータを表示させる情報補償技術もあらたに開発する.一方,症状―病態の相互予測については,開発した歪測定と補償技術の検証実験を進めながら,視界測定データ及びOCTデータの収集を行う.また当該問題に適する深層学習モデルの検討を行う.
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備考 |
新聞報道: 「視界の歪みが簡単に推定」 2019年6月18日 日経産業新聞 6面
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