研究課題/領域番号 |
19H05484
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
栗崎 周平 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70708099)
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研究分担者 |
広瀬 健太郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 講師(任期付) (90764738)
芝井 清久 統計数理研究所, データ科学研究系, 特任助教 (90768467)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2024-03-31
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キーワード | 核抑止 / 核軍縮 / ゲーム理論 / 技術革命 |
研究実績の概要 |
当初の2019年度(3ヶ月間)における研究計画は、海外から研究者らを招き共同研究を進める中で研究課題を立ち上げることであった。しかしコロナ禍の影響で3月開催予定のキックオフワークショップを2020年度9月に延期し、コロナ禍が収束しない中でこれを再度延期した。その後も感染状況の改善がなかったため推進方法を大きく変更し、研究代表者である栗崎が共同研究者の多くが滞在する米国に滞在し研究することとした。2021年度夏以降栗崎がスタンフォード大学に滞在し当初の研究の遅れを取り戻すべく精力的に活動した。
その間、共同研究者の主力メンバー2名が離脱する不幸があったものの当初の予定である「核兵器に依存しない核抑止戦略」の数理モデルの青写真を描きそれを専門家らの研究会議で報告し一定の評価を得る段階に到達することができた。 栗崎が所属するスタンフォード大学のCISACでは、核兵器をめぐる研究者(政治学、歴史学、工学、実務経験者、技術者)が多数在籍しており、毎週のセミ ナーや頻繁に開催される勉強会を通じて、核兵器をめぐる諸問題を中心とした国際安全保障問題について多角的に検討してきた。この中で当初の研究課題の中核となるアイディアを論文としてまとめスタンフォード大学で開催されたRevisiting Nuclear Ethicsと題された研究会議で報告した。基本的なアイディアは、昨今の科学技術の進展(精緻誘導・リモートセンシング・低火力などの革命)などと称される一連の軍事技術が、核兵器に依存しな い核抑止戦略を実現可能のものとし、従来の核戦略に伴う非人道性(大量破壊や放射能や無差別攻撃)を回避できる一方で、しかしながら従来の核戦略が達成した政治・軍事目標を技術的には達成できることを確認しつつ、従来の核抑止戦略と同等のロバストネスとクレディビリティを達成する数学的構造を持つこと示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、当初の計画通りスタンフォード大学での研究をスタートさせ、また内部での審査を通り1年間延長し、2年間の長期滞在が許可されたこと、ス タンフォード大学における研究環境により核抑止や核軍縮についての理論的な側面のみならず実務および科学技術の双方の側面で飛躍的に情報を処理することが できていること、そして具体的な成果としての核兵器に依存しない核抑止戦略についての理論モデルの開発が成功裡に進んでいることが、進捗判断の好材料とし てある。とくにこの核兵器に依存しない核抑止戦略の考案は難易度が高く、その意味で挑戦的な課題であったが、その方途が見えたこと、当該研究分野における 第一人者であるScott Sagan教授や、1980年台にNuclear Ethicsと題された著作の中で核抑止戦略と核軍縮の間の倫理性を論じたJoseph Nye教授らから高く評価 されたことはこの挑戦を成功させる兆しを見出していることは幸運である。他方で、前述の通り主要な研究協力者であったフィアロン教授がバイデン政権入りし たこと、パウエル教授が逝去したことにより、研究代表者自身の研究のみならず他の著名な政治学者を巻き込んで大きな研究ムーブメントを作るという方向では 進展が見られない。ただし、これについてはスタンフォード大学のScott Sagan教授と相談しながら別の形での研究の機運を起こしていく方策を検討しているところにある。
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今後の研究の推進方策 |
この研究課題の一丁目一番地である「核兵器に依存しない核抑止戦略」の理論モデルを成功裡に完結し、これを政治学の著名な雑誌に掲載することを至上命題と して、そこに注力をしていく。その上で、この理論モデルの政策的インプリケーションを高めていくために、中核となるLeadership Punishment Strategyに関する理論モデルに加えて、No First Use Policy のモデル分析にも着手する予定である。
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