研究課題/領域番号 |
20K20418
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配分区分 | 基金 |
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
野口 晴子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (90329318)
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研究分担者 |
川村 顕 神奈川県立保健福祉大学, ヘルスイノベーション研究科, 教授 (10422198)
阿波谷 敏英 高知大学, 教育研究部医療学系医学教育部門, その他(教授相当) (10467863)
花岡 智恵 東洋大学, 経済学部, 准教授 (30536032)
朝日 透 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (80222595)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 健康政策研究 / 因果推論に裏付けられた科学的根拠 / 文理融合によるビッグデータの利活用促進 / 価格政策と数量政策 / 定量分析と定性分析との融合 |
研究実績の概要 |
本研究では、日本の健康政策研究を、大規模な医療・介護情報の整備という第1段階から、「文理融合」による「因果推論に裏付けられた科学的根拠」の創出と実装という第2段階へと推し進め、これまで日本の実証研究が直面してきた様々な分析上の限界に挑戦する。 本研究にとって折り返し点となる令和2年度は、新型コロナ感染拡大の影響を受け、各種データの二次利用・第三者提供に係る申請作業を行ったデータの到着が予定よりも1年以上遅延したが、本研究の第1の目的であった、分野横断的・学際的な協働作業に際し、データ構築の上で、何が必要で、何を排除すべきか、一連のプロセスについての検証を行い、因果推論の遂行に必要なデータベースの構築については、ほぼ完了した。具体的には、分析拠点となる早稲田大学において、ストレージ(Synology NAS FS3017 & Crucial MX300 × 24)を設置し、NDBデータと介護給付費実態調査(介護レセプト)の解析に必要な研究環境を構築した。 第2に、統計解析ソフトRにより医療・介護レセプト情報を解析するデータサイエンティストを新たに研究協力者とし、介護給付費実態調査を用いて、自治体が活用可能な都道府県レベルでの介護情報を閲覧することの出来るアプリの開発を行った。さらに、当該研究協力者による大学院生とポストドクターへのトレーニングを行い、データマネジメントを実施することの出来る人材育成を行っているところである。 第3に、当該テーマに対する国内外における学際的な領域の先行研究に関するレビューを行うと共に、従来型の診療報酬制度と診断群別定額払い方式(DPC)とのハイブリットシステムの政策評価、地域における医師密度が医師の診療に対する労働供給とキャリアに及ぼす影響に関する実証分析等、医療サービスの供給サイドに焦点を当てた実証分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究にとって折り返し点となる令和2年度は、新型コロナ感染拡大の影響を受け、各種データの二次利用・第三者提供に係る申請作業を行ったデータの到着が予定よりも1年以上遅延し、当初、進捗の遅れが心配された。しかし、データサイエンティストを新たに研究協力者として迎え、当初予定していた、Structured Query Language (SQL)から統計解析ソフトRに一時的にデータマネジメントの手法を変更したことにより、因果推論の遂行に必要なデータベースの構築については、ほぼ完了することが出来た。具体的には、第1に、分析拠点となる早稲田大学において、ストレージ(Synology NAS FS3017 & Crucial MX300 × 24)を設置し、NDBデータと介護給付費実態調査(介護レセプト)の解析に必要な研究環境を構築した。第2に、介護給付費実態調査を用いて、自治体が活用可能な都道府県レベルでの介護情報を閲覧することの出来るアプリの開発を行うと共に、現在、データマネジメントを実施することの出来る人材育成を行っているところである。 また、当該テーマに対する国内外における学際的な領域の先行研究に関するレビューを行い、先行研究に基づき、医療サービスの供給サイドに焦点を当てた複数の因果推論を行った。例えば、制度変更を利用した自然実験による手法を応用した「従来型の診療報酬制度と診断群別定額払い方式(DPC)とのハイブリットシステムの政策評価」、また、機械学習の手法を応用した「地域における医師密度が医師の診療に対する労働供給とキャリアに及ぼす影響に関する実証分析」等である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のテーマに即した主要なディシプリンとして、経済学・公衆衛生学・社会疫学・データサイエンス等があるが、本研究で実施した先行研究から、当初の予想通り、本来学際的でなければならない研究テーマであるにもかかわらず、分野横断的な研究がいまだ少ないことがわかった。 本研究では、昨年度末から今年度はじめにかけて構築されたデータベースを活用し、自治体が活用可能な介護情報の提供アプリの開発や因果推論に着手しているところである。今後2年間では、介護情報に続き医療情報についても自治体が活用可能なアプリの開発を行うと共に、こうした悉皆情報に基づく記述的な情報から汲み取られるであろう、医療・介護に関する多様な仮説についての因果推論を行う。 さらに、本研究の「文理融合」の特徴を活かし、term frequency-inverse document frequency(tf-idf)等を用いた形態素の重要度を測定し、その上で、主成分分析やクラスター分析により発言の距離を測定した研究、support vector machine 等の機械学習の手法を用いた研究、深層学習等を用いたサービスミックスの予測を行った研究等を中心にレビューを行う。そうした先行研究のレビューに基づき、実際の審議会情報を用いた質的な分析を、本研究によって整備された量的情報に突合することによって、量と質両面で医療政策・介護政策に資するのハイブリッドな科学的エビデンスの構築を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年において、複数の管轄省庁に対し介護給付費実態調査等計16種類のデータ申請を行った。当初、令和元年10月、事前相談・内諾を経て、同年11月に解析を開始する予定であった。しかし、令和元年度には、当該省庁に対する申請が殺到し混雑しており、さらに、令和2年度には、COVID-19感染拡大の影響により、結果、データの内諾・取得に約1年10カ月かかり、本研究に必要な全データの取得が令和3年度末と大きく出遅れてしまった。研究遂行上、実証的手法による医療・介護の需給両面での政策効果を推定するためには本データの取得・解析は必須であり、研究期間を延長する必要が生じた。
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備考 |
早稲田大学・重点領域研究によって設立されたソーシャル&ヒューマン・キャピタル研究所 (Waseda Institute of Social and Human Capital Studies:WITH)のHP
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