太陽系では宇宙線と天体の衝突で発生するガンマ線を画像計測して外縁部小天体群を観測する手法を開拓する。また核γ線の特徴を生かし月等岩石惑星の元素分布測定の可能性を探る。我々は核γ線のコンプトン散乱を再構成する電子飛跡検出コンプトンカメラ(ETCC)を開発、核ガンマ線画像分光を可能にすることで従来の観測手法より3桁高感度を実現、このような計測可能性をETCCの実測性能を踏まえてシミュレーションで検証する。そのために2018年に行った気球による銀河観測のデータの精密な解析と調査が必要となる。このデータでは銀河面ガンマ線が明確に観測されているが、どのような分布やスペクトルが得られるかを分析、その手法を使いこのデータから太陽、黄道面ガンマ線など太陽系ガンマ線の検出の可能性の調査が行える。今年度は銀河面ガンマ線の精度を上げるためガンマ線 の集光度を表すPoint Spread Function (PSF)の改善に注力した。このPSFはETCCが図る電子飛跡の方向があって初めて決まるため従来のMeVガンマ線観測では 決まらず、そのため観測の精度が大変悪かった。それにAIを用いた飛跡解析を可能にして、電子方向精度を70度(半値)から40度以下と半分に改善、その結果PSFが30度から20度大きく改善した。また今までMeV領域で最も問題だった宇宙線による装置由来の雑音γ線の理解が進み、解析とは無関係な一般に使用される宇宙線大気ガンマ線モデルと装置由来雑音γ線計算を合わせることで、実験結果とは全く独立に観測されたガンマ線の時間変化を再現でき、宇宙天体由来のガンマ線が雑音と同等以上に検出できたことを世界で初めて実証した。今まで最もS/Nが良かったCOMPTELでも数10倍以上の雑音であった。特に銀河通過時間のみ明らかに予想より10σの増加、銀河拡散ガンマ線を確定した。
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