研究課題/領域番号 |
19H05503
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
稲垣 史生 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 研究プラットフォーム運用開発部門, 室長 (50360748)
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研究分担者 |
鈴木 志野 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (10557002)
星野 辰彦 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 超先鋭研究開発部門(高知コア研究所), 主任研究員 (30386619)
浦本 豪一郎 高知大学, 海洋コア総合研究センター, 特任助教 (70612901)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 生命生息可能条件 / 閉鎖系地下水圏環境 / 地下生命圏 |
研究実績の概要 |
カナダ・オンタリオ州のキッド・クリーク鉱山において、深さ約2.4km・27億年前の岩体に含まれる地下水の水平抜水孔の出口に中空糸膜カートリッジを設置し、当該地下水に生息する微生物細胞を採取した。同時に、リファレンスとして鉱山作業で用いられるサービス・ウォーターに含まれる微生物細胞を採取した。現場環境で採取したフィルターから環境DNAを採取し、PCR法により増幅された16S rRNA遺伝子の塩基配列に基づく微生物群集構造解析を行なった。その結果、炭化水素資源を胚胎する北アメリカ大陸北東部のマーセラス頁岩にて検出されたProteobacteriaやFirmicutesを優占種とする地下微生物群集の組成に類似の解析結果を得た。また、古細菌に属する系統は検出されなかった。本環境は、希ガスの同位体分析などから20億年以上前に起源を持つ地球最古の閉鎖的地下水系であることが示唆されており、硫黄分別効果に付随する硫酸還元菌などの微生物の存在が示唆されていたが、本16S rRNA遺伝子に基づく群集組成の結果はそれらの予察的な結果にやや反し、高塩分環境に適応した従属栄養型の地下微生物生態系が北米大陸の地下圏に広域に存在していることを示唆している。しかし、それらの微生物がどのような代謝活動を実際に行なって存続してきたのかを考察するには本解析結果だけでは不十分である。次年度には、本フィルター試料を用いたメタゲノム解析及びメタトランスクリプトーム解析を実施し、機能遺伝子の発現パターンからの考察や、マーセラス頁岩に生息する微生物群集との比較(メタ)ゲノム解析を試みる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
キッドクリーク鉱山の地下水に含まれる微生物細胞の捕集とDNA抽出に成功し、当該環境に生息する地下微生物群集の系統学的多様性に関する予察結果を得た。従って、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
地下微生物細胞を含む中空糸フィルターサンプルから環境DNAの抽出・精製を行い、メタゲノム解析を試みる。それにより、現場環境で活性の高い微生物種とその代謝機能を特定し、地下水圏環境で起きている生物地球化学的な物質循環を明らかにすると共に、当該地下圏微生物のゲノム進化に関する考察を行う。
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