研究課題/領域番号 |
20K20434
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
肥後 陽介 京都大学, 経営管理研究部, 教授 (10444449)
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研究分担者 |
松島 亘志 筑波大学, システム情報系, 教授 (60251625)
大竹 雄 東北大学, 工学研究科, 准教授 (90598822)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 土の形態変化 / ミクロスケール / 多相系 / マイクロメカニクスベースモデル / データサイエンス |
研究実績の概要 |
前年度までに明らかにした,ミクロスケールの多相系組織形態変化に基づき,メソ~マクロの土の挙動を基本的な土質力学の物理量を用いて記述するマイクロメカニクスベースモデルを構築した.土相のみの粒状体マイクロメカニクスベース構成式を定式化し,特に土の限界状態を表現するための拡張を実施した.次に,不飽和土のサクションの影響を考慮し,前年度までに開発した液架橋の影響のモデルに加え,バルク水の影響をモデル化し,定性的なモデルのパフォーマンスを確認した.さらに,微視的な不飽和土の保水性試験の観察結果から,微視的な観点から水分特性曲線をモデル化した.規則充填モデルを構築し,等球径ランダム充填の密度分布を導入することで土粒子構造の密度不均一性を表現した.等球径ランダム充填と菱面体構造の密度の範囲に着目し,分布の適用範囲についても考察した.構築したモデルを用いて,土粒子構造の不均一性を仮定した場合と均一な構造を仮定した場合のSWCCを比較した結果,不均一性を仮定した場合の方がSWCCの比水分容量が小さくなることが分かった.また,土粒子構造の不均一性がSWCCに与える影響は単粒径の供試体ほど小さく,不均一性の有無よりも粒度分布の差異の方がSWCCに顕著な影響を及ぼすことが示唆された. DEMシミュレーションを実施し,解析的に多相系組織形態変化を解釈することを試みた.まず土相だけの力学挙動をシミュレーションし,多相解析への拡張の準備を終えた.次に既往の実験結果を改めて観察し,土粒子の接触点及び間隙にどのように間隙水が付着しているのかを詳細に観察し,多相解析への拡張の際にモデル化に必要な物理現象を明らかにすることを試みた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既往の実験結果に基づく,マイクロメカニクスベースモデルの構築は順調に進んでいる,一方で,コロナウィルス感染症拡大の影響で,実験が実施できず研究に遅れが生じている. これに伴い,超解像技術によるミクロ~メソへのアップスケーリングにも遅れが生じている.ここでは,X線マイクロCT画像にデータサイエンスを適用し,土が粒状体として潜在的に有するミクロな不均質性とメソ・マクロの物性値の空間変動の関係をモデル化し,不均質性のミクロ~メソ~マクロへのスケールアップを実現するが,ミクロスケール(土粒子・間隙)の高解像度CT画像とメソスケール(供試体)の中解像度CT画像の関係を「学習」させるための画像取得が進んでいない.
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今後の研究の推進方策 |
■粒状体マイクロメカニクスベースモデルの不飽和土への拡張:ミクロスケールの多相系組織形態変化に基づき,メソ~マクロの土の挙動を基本的な土質力学の物理量を用いて記述するマイクロメカニクスベースモデルを構築し,これを実装した地盤の変形解析法を確立する.前年度に引き続き,土相のみの粒状体マイクロメカニクスベース構成式を定式化する.特に,飽和度の高い領域についての定式化を行う.入力パラメータは,マクロな間隙比,ミクロな土粒子間のすべり剛性と摩擦角,粒度のみである.これに,実験で明らかにした間隙流体の存在形態,液架橋構造のサクションから,水分保持特性曲線を記述するとともに,有効応力と土粒子間接触力への寄与を考慮した不飽和土のモデルへ拡張する. この時,入力パラメータはマクロな飽和度のみであり,水分の分布は土粒子接触点,個々の間隙体積の分布からモデル化する. ■DEMによる実験結果の解釈とモデル検証:DEMシミュレーションを実施し,解析的に多相系組織形態変化を解釈する.また,DEM解析の結果の比較からマイクロメカニクスベースモデルの検証を行う. ■超解像技術によるミクロ~メソへのアップスケーリング:X線マイクロCT画像にデータサイエンスを適用し,土が粒状体として潜在的に有するミクロな不均質性とメソ・マクロの物性値の空間変動の関係をモデル化し,不均質性のミクロ~メソ~マクロへのスケールアップを実現する.前年度に引き続き,データサイエンスの超解像技術を応用し,ミクロスケール(土粒子・間隙)の高解像度CT画像とメソスケール(供試体)の中解像度CT画像の関係を「学習」させることにより,ミクロスケールの高解像度を維持した状態でメソスケールの空間規模の画像を取得する.これにより,数cmスケールの供試体全体にミクロスケールの不均質性をアップスケーリングする.
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次年度使用額が生じた理由 |
X線マイクロCTを用いた砂の保水性試験を計画していたが,新型コロナウィルス感染防止の観点から先送りにした.アップスケーリングのモデル化に必要な高解像度画像と低解像度画像の取得が未実施となっている.この理由により,次年度使用額が生じた.翌年度,これらの先送りした研究を実施するとともに,当初予定の翌年度研究計画も実施する.これらの研究に,次年度使用額と翌年度分として請求した助成金額を合わせた金額を使用する計画である.
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