研究課題/領域番号 |
19H05512
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
早稲田 卓爾 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 教授 (30376488)
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研究分担者 |
小平 翼 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 助教 (60795459)
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研究期間 (年度) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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キーワード | 自立昇降型海洋観測 / 波浪・海洋結合観測 / 荒天下対応 / 防災 / Argo / eXpendable Wave Gauge / 波浪海氷相互作用 |
研究実績の概要 |
2019年度はWave-Argo-Typhoonの開発に向けて、機器開発、実験の実施、そして国内学会並びに国際学会にて情報収集を行った。なお、国内学会では試験的な実験結果を発表し、意見交換を行った。 【機器開発】国内学会並びに国際学会にて情報収集を行った結果、自立昇降型の海洋観測機器へ波浪計を搭載し長期間計測するための鍵は、省電力化であることが判明した。近年開発が進んでいる小型・軽量マイコンと周辺機器を精査した結果、Adafruit社のFeatherボードを用いた構成での開発を行い、消費電力が0.3-0.4Wと研究開始当初想定していた機器の1/5程度の消費電力となることを確認した。また、各種IMUを試し、6軸、9軸、そしてセンサ・フュージョンにより姿勢角の算出まで行うことのできる製品を含めて、海洋観測フロートに組み込む上での必要な知見を得ることが出来た。 【実験】実海域実験を相模湾江ノ島沖で複数回実施し、新たに開発した安価な慣性計測装置(IMU)の波浪場推定精度検証を行った。精度検証には波浪計測の目的に昨今多く活用されているSofar Ocean Technologies社の漂流型波浪計測ブイ Spotter V2の筐体内にIMUを設置し、同一浮体の変位を、GPS(直接計測)とIMU(加速度から変位推定)計測値の比較を行うことで実施した。その結果、Spotter V2と同等の有義波高が計測できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
プロトタイプの波浪観測ブイ(自動浮沈)の実海域動作確認を行ったところ、当初の想定に反し、既存のソフトウェアのパラメター調整では、要求する性能が得られないことが判明した。研究遂行上、波浪観測ブイの自動浮沈制御が不可欠なため、ソフトウェアの開発、波浪観測ブイの実海域操作確認及びデータ解析を追加で実施する必要が生じた。 また、海洋観測フロートに搭載する波浪計測機器は、慣性計測装置(IMU)としてMPU-9250、制御基板としてArmadillo-X1を想定していた。この構成では、無線(Wifi)を用いた制御基板との通信が可能であり、かつ汎用プログラミング言語Pythonの利用も可能であるため、円滑なデータ取得・解析スクリプトの構築が可能と考えていたが、消費電力が2W程度必要であり、長期的な観測に向けては障害となるため、異なる機器の選定を行った。選定を行う上ではIMUの精度検証も連動して行う必要があり、室内実験ならびに実海域試験を行った。 検証は、波浪の比較的広い周波数帯を1m以上の振幅を持って計測する必要があるため、実海域での試験が適している。そこで実海域試験を行ったが、変更候補として試験したIMU(LSM6DS33)で計測される水平方向加速度が鉛直加速度に比べて小さくなるという結果を得た。これは室内実験で試験していた周波数帯では確認できなかった問題であるが、方向スペクトルの推定に支障をきたす。そこで、別途姿勢計測等も含めたより高機能なIMU(BNO055)を試験した。機器選定の中でAdafruit社のFeatherを試験し、消費電力が0.3-0.4W程度に抑えられることを確認できたが、上述の通りIMUの選定に予想以上に時間を要した。そのため、海洋観測フロートへの組み込みも遅れており、波浪計測を目的とした組込みシステムとしての評価を含め、研究全体としてやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
・さらなる波浪場推定精度検証の実施:今年度実施した漂流型波浪計測ブイ Spotter V2の筐体内にIMUを設置し、同一浮体の変位を、GPS(直接計測)とIMU(加速度から変位推定)を用いて計測する。鉛直方向の変位については既に確認できているが、水平方向の変位の推定までIMUを用いて実施できるようにする。 ・海洋観測フロートへ組み込み、実海域での展開・回収試験:海洋観測フロートへ組み込み、フロートの制御基板とIMUの制御基板との頑健な通信方法を確立する。また、波浪推定精度についても、同時に漂流型波浪計測ブイ Spotter V2等を展開することで比較検証する。 ・海洋観測フロートの小型模型を作成し、IMUを搭載し、造波水槽を用いて、海面下での波浪計測試験を行い、海面下のフロートの同様に基づいた波浪の計測手法について検討を行う。 ・実海域への投入・漂流:回収を想定しない投入を行い、定期的な計測ならびにデータの衛星送信を実施し、実証試験を行う。
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