研究課題/領域番号 |
20K20440
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
後藤 雅宏 九州大学, 工学研究院, 教授 (10211921)
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研究分担者 |
田原 義朗 同志社大学, 理工学部, 准教授 (30638383)
原田 耕志 山口大学, 大学院医学系研究科, 講師 (60253217)
若林 里衣 九州大学, 工学研究院, 助教 (60595148)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イオン液体 / 経皮吸収 / ワクチン / ペプチド / タンパク質製剤 / 核酸医薬 / バイオ医薬品 / 界面活性剤 |
研究実績の概要 |
本研究では、生体由来の分子からなる生体適合性の高いイオン液体を開発した。構成成分として、生体由来の分子であるアミノ酸をイオン液体のアニオンとして利用する可能性を示し、さらには同じく生体由来の分子であるコリンをカチオン、アミノ酸であるプロリンをアニオンとしたイオン液体を開発した。このコリン-アミノ酸からなるイオン液体は、カチオンとアニオンがどちらも生体内に存在する分子で構成されており、細胞を用いた毒性試験によって、安全性の高いイオン液体であることを確認した。また、コリン-アミノ酸からなるイオン液体によって、難水溶性の抗がん剤であるパクリタクセルが高濃度でイオン液体に溶解することも明らかにした。 コリンは、数少ない代表的な生体由来のカチオン分子であり、本研究でもコリンをカチオン部に用いた整体適合性のイオン液体開発を行った。難溶解性薬物であるアシクロビルの経皮デリバリーへの応用を、コリン-アミノ酸からなるイオン液体を用いて調製した。本研究では、特にコリン-グリシンからなるイオン液体が、高いアシクロビルの溶解性を示した。 一方で、コリン-グリシンは親水性が高く単独での皮膚浸透性が低いことから、イオン液体とエタノール、経皮吸収促進剤である油の三成分を組み合わせることによって高浸透に皮膚透過することを明らかにした。同様に、イオン液体、エタノール、経皮吸収促進剤である油からなる三成分系によって抗原ペプチドの経皮デリバリーも可能となった。コリン-脂肪酸からなるイオン液体の中でも、コリン-オレイン酸を用いると人工皮膚での細胞毒性も低く、抗原ペプチドの皮膚透過性も促進することを明らかにした。 さらに、担がんマウスを利用した予防ワクチンの検討においても、イオン液体からなる経皮ワクチンは、注射ワクチンよりも効率よく腫瘍体積の増加を抑制し、効率の良い経皮吸収送達技術となることを確認した。
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