光、超伝導、シリコン、冷却原子といった様々な量子系による万能量子コンピュータが研究されているが、集積された多数の量子ビットの個別制御が難しいという致命的な問題がある。本研究の目的は安定した量子状態を実現するダイヤモンドのNV中心をプラットフォームとし、レーザ光で各量子ビットにアクセスする手法により、この問題を根本的に解決することである。
初年度に当初計画していた初年度の目標である「光シフトにより個別に周波数制御されたNV中心の単一量子ゲート操作を実現」を達成し、2年目に「光アクセスによる個別NVの電子スピンへの書き込みと個別読み出し」を達成し、3年目に当初の計画通り、光アクセスによる個別NVの窒素核スピンへの書き込みと個別読み出し光アクセスによる個別NVの窒素核スピンへの量子状態の書き込み、量子ゲート操作、読み出しを行った。最初にA1準位に共鳴するレーザ光で全てのNV中心の電子スピンを補助準位(ms=0)に初期化した。個別NVの窒素核スピンへの書き込みは、①Ex制御光で光シフトしたゼロ磁場分裂に共鳴するマイクロ波で選択したNVの電子だけを補助準位(ms=0)から幾何学量子ビット準位(ms=±1)に遷移、②A2準位に共鳴するレーザ光を用いたCPTにより幾何学量子ビットを所望の量子状態に設定、③マイクロ波およびラジオ波による磁気共鳴操作により電子スピンから窒素の核スピンへと状態転写、の順で行った。個別NVの窒素核スピンからの読み出しは、①光シフトとマイクロ波共鳴で特定のNVだけを選択、②窒素の核スピンから電子スピンへと状態転写、③A2書き込み光を用いた発光により電子の状態を読み出し、の順で行った。この際、窒素を補助量子とした射影的シングルショット測定により、読み出し効率を100%近くとした。さらに大規模集積化に向け、ダイヤモンドへの窒素イオン注入によるNV中心の形成を行った。
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